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菅原由勢が日本代表デビューで果たした約束。吉田麻也に「2年間待たせてすみません」と謝ったワケ

text by 編集部 photo by Getty Images

菅原由勢
【写真:Getty Images】

 日本代表は13日に開催予定のコートジボワール代表との国際親善試合に向けてオランダ合宿を続けている。

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 現地9日に行われたカメルーン代表戦は0-0の引き分け。課題も多く出た試合になったが、この一戦で日本代表の未来を担う期待の逸材がデビューを果たした。オランダ1部のAZアルクマールに所属する20歳のDF菅原由勢である。

 後半も終盤に差し掛かった86分、原口元気との交代でタッチラインをまたいだ菅原は左ウィングバックに入り、試合終了までプレーした。

「サッカーを始めた時からA代表のピッチに立つことをずっと目標にしてきましたし、短い時間ではありましたけど、A代表のピッチに立てつことができて、すごく自分的にも嬉しかったというか。

ここまで来ることができたなという実感と、やっとスタートラインに立った、ここからまた自分のサッカー選手としての大きなキャリアが始まると思っているので、これまで関わってくださった皆さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います」

 カメルーン戦から一夜明けた10日にオンライン取材に応じた菅原は、改めて日本代表デビューの喜びを語った。

 試合後には古巣である名古屋グランパスの公式ツイッターの投稿が話題にもなった。

「2018FIFAワールドカップのメンバーに選出された吉田麻也選手へ、当時のグランパスU-18から寄せ書きが送られました。殆どの選手が『頑張ってください』とメッセージを送った中で、一人だけ『待っててください』と書いた選手がいたと吉田選手が教えてくれました。祝初キャップ! 菅原由勢選手」

 この投稿で明かされた「待っててください」と書いた選手が、まさに菅原だったのである。ロシアワールドカップから2年経ち、20歳になった若武者は、同じく名古屋の育成組織出身の吉田が待つA代表の舞台にたどり着いた。

「2018年ワールドカップの時に自分が国旗にメッセージを書いた時に『待っててください』と確かに書きました。本当に吉田選手が自分の中で大きなモチベーションというか、1つの大きな目指すべき存在というか、尊敬する立場でもありますけど、でも自分としては越さなきゃいけないというか、追いつけ追い越せだと思っていて、だからこそ早く一緒のピッチに立ちたいという思いがありました。

吉田選手は(日本代表)100試合出場をしてると思いますけど、100試合出場もそうですし、いま吉田選手が与えているもの以上のものを自分が日本代表に対して与えられるようになった時にこそ、『自分が吉田選手に比べてどうだったか』ということがわかると思うので、まずは2年前の自分にようやくここまで来られたことを伝えたいと思います」

 そして無事に日本代表での初めての試合を終え、吉田からは「デビューおめでとう」と言葉をかけられたという。それ以前の合宿が始まったばかりの頃のエピソードも、菅原は明かしている。

「今回の遠征の一番最初の時に、吉田選手が『待っててください』というメッセージを僕が書いていた話を選手としていて、そうしたら『もう来たな! すぐ来ちゃったよ』みたいな感じで言っていて、『2年間待たせてすみません』という感じなんで、本当に。

でも、そういうことを覚えていてくれたのがうれしいですし、自分がそういうメッセージを残して、実現できたのもいいことだと思います。やっぱり口に出して、それを自分の中で具体的にしていくことがこのA代表デビューにつながったと思うので、すごく自分にとって大きなことだなと思います」

 20歳とは思えない思考の深さと落ち着きで、菅原からは明るい未来の予感がする。彼にとってこのタイミングでのA代表デビューは「待たせてしまった」という感覚になるのだ。吉田でさえ初キャップは21歳の時で、若手中心の実質的なB代表と言えるチーム構成の試合だったのに。

 初めての日本代表合宿ながら、菅原の「いろいろなものを見て、聞いて、肌で感じて勉強することもそうですけど、でも初招集だからといってそればかりではなく、自分は1人の日本代表選手として勝利に対して貢献しなければいけないですし、ハードワークするところを見せていかなければいけない」というメンタリティは、到底若手選手とは思えない。

 キャリアの大きな一歩を刻み、新たなスタートラインに立った菅原は日本代表に新たな歴史を築き上げることができるだろうか。憧れだった大先輩はチームメイトになり、超えるべき目標として、すぐ近くにいる。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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