浦和レッズは前進している。改革元年の成果を検証、目を引くセンターラインの役割【週刊J批評】

明治安田生命J1リーグ、浦和レッズ対セレッソ大阪が24日に行われ、浦和が3-1で逆転勝利を収めている。強化体制を一新した浦和にとって今季は3年計画の元年に当たるが、最近の好調の理由はどこにあるのだろうか。(文:河治良幸)

2020年10月27日(Tue)10時30分配信

text by 河治良幸 photo Getty Images
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改革元年の浦和レッズ

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【写真:Getty Images】

 浦和レッズはここ4試合で3勝1敗。第24節のホームゲームでは上位のセレッソ大阪を相手に3-1の逆転勝利を飾った。スタッツを見ても堅守を誇る相手に16本のシュートを記録した。ボール支配率は41%だったが、完全なカウンター狙いというよりは前半のうちに逆転に成功して、後半に守備から入る意識を強めたことが影響している。

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 大槻毅監督はオズワルド・オリヴェイラ前監督の契約解除にともない、昨シーズンの5月に就任して、14位で成績を終えた。監督交代を決断したクラブの意を汲んで危機感を持って臨むことを強調していたが、精神的な立て直し、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)も並行しながら戦っていた中で、チームの方向性を定めて強化して行くのが当時は難しかったのではないかと見ている。

 2017年から3年間でのべ5人が監督を務めたことによる変化が大きく、腰を据えてチームを軌道に乗せることがなかなかできなかった。それを踏まえ今シーズンに臨むにあたっては土田尚史スポーツディレクターが2022年のリーグ優勝、さらに安定して優勝争いできるチームにして行く“3年計画”を発表した。

 毎年タイトルを狙い、1試合1試合、勝利を求めていく従来の浦和レッズのポリシーからすると、疑問の声が出るのも当然だが、現実を見ながら着実にチームを強化し、成長させて行く方向性は理にかなっているところもあるだろう。その中で、“改革元年”の1年目の指標として掲げられたのが“得失点差プラス二桁”という数字だった。

4-4-2のベーシックな狙い

 得点や失点ではなく得失点差になっているのは「2点取られたら3点取る」というコンセプトに基づくものと捉えられるが、前線から最終ラインまでをコンパクトにして、ボールを奪ったらゴールにまでできるだけ素早く運んでフィニッシュするというビジョンをいかに共有できるかが1つのイメージになっている。

 4-4-2というフォーメーションを一貫して用いているのも、それらを効率よく導入するためだろう。ただ、ここで誤解するべきではないのは攻撃面の志向として、とにかく一発のカウンターを狙うというスタイルではないこと。基本的には流行の“5レーン”をベースにビルドアップを設計して、サイドバックとサイドハーフ、同サイドのボランチの三枚でチャンスの起点を作り、2トップに良い形でフィニッシュさせるのが基本となる。

 ただ、そうした形があまりにも固定してしまうと相手の守備にはまり停滞してしまう。筆者が取材していた沖縄キャンプの当初から、ベーシックな狙いというのは見られたが、公式戦となればJ1の相手がそうそう好きにやらせてくれることはない。強度が高くなり、プレッシャーがかかればミスやズレも起きるし、自陣で守る時間帯も多くなる。

 観る側からすると「何をやりたいのか分からない」という批判が出てくるのも当然だ。ただ、そうしたところから徐々にチームが前向きになり、外にも狙いが見えてきたというのは、過密日程を戦いながらも、着実にチームが前進していることの表れとも見て取れる。

2トップの役割分担

 この数試合で特に目を引くのは2ボランチの関係性の安定と2トップのビルドアップからの関わり方だ。

 前者はエヴェルトンと長澤和輝がファーストセットになっているが、1人がサイドに関わる時のもう1人のポジションの取り方、サポートが安定している。ただ攻守のバランスを取るだけでなく、例えば1人が起点に加わったら、もう1人がタイミングを見て2トップに並びかける、時には追い越すような飛び出しを狙うことができているのだ。

 後者は興梠慎三と武藤雄樹の2トップがメインになるが、2人のどちらかがワイドに流れたり、手前に引いたりしながらビルドアップに厚みをもたらし、一方でもう一人が相手のセンターバックと駆け引きすることで、フィニッシュの布石を敷く。ここまでチーム得点王の11ゴールをあげているレオナルドの途中出場が多くなっているのも、ここに関係していると筆者は見ている。

 やはりレオナルドというのは常に前線でボックス内、ゴールに近いところにいることで決定力を発揮するタイプであり、彼を生かすにはパートナーの選手がもっぱら衛星的な動きでお膳立てをしなければいけない。

 理想は周りの選手だけでチャンスを作り、2トップはフィニッシュに迫力をもたらすことに専念できることだが、現時点の中盤やサイドにそこまでの構築力は求められない。やはり2トップの一角がチャンスメークに関わることが攻撃の機能性を高める前提になっている。

 もちろん後半になり、流れが変わってくると、相手のプレッシャーを受けずにボールが運べたり、中盤を省略して2トップをそのまま生かせるようなシーンも増えてくる。そうなるとレオナルドの決定力がダイレクトに生かしやすいので、長身FWの杉本健勇も含めた4枚に関しては、純粋な序列というより、そういう役割のイメージが起用法に反映されているかもしれない。

 さらにセンターバックも後ろから中盤やサイドにつなげるだけではない。例えば右サイドで起点を作るとき、スライドしてリスク管理とバックパスの選択肢を作る両面で関わることにより、相手の守備より数的優位を作っている。基本的なことではあるが、バランスよく攻撃に関われていることが、ここ数試合のパフォーマンスとして表れている。

攻撃の課題は…

 こうした全体の関係性が良くなることで、セカンドボールを拾いやすく、さらにボールを失っても即時回収で、高い位置から二次攻撃やリスタートに持ち込めるという好循環をもたらす。そうした戦い方がセレッソ大阪のような完成度の高いチームを相手にしても、ある程度できたというのは今後に向けた自信になるはずだ。

 課題としてはやはりチャンスメークにおけるFWの負担が大きく、肝心なフィニッシュでパワーを使い切れていないこと。もう1つは最後の崩しや危険なフィニッシュに持ち込む段階で、最後はどうしても相手のクリアミスなどからのセカンドボール頼みになっている。できれば、そこから崩し切ってゴールを奪う可能性を高められると、もう1つ攻撃の厚みが出てくるはず。

 そして現在は守護神の西川周作を後ろ支えとして、岩波拓也と槙野智章のセンターバック、エヴェルトンと長澤和輝のボランチ、興梠慎三と武藤雄樹というセンターラインが安定している。スタートから別の組み合わせになっても、ほぼ同じような戦い方ができるかどうかが成績を良い方に安定させる鍵で、それがうまくできないと悪い意味でもレギュラーの固定化が生まれてしまう。

 25試合を終えた段階で12勝9敗4分と勝ち越しているが、38得点、39失点。目標の得失点差プラス二桁には程遠い。良くなってきたと言っても、明確なエビデンスとしてはここ数試合に過ぎない。ここから目に見える内容と結果で来季につながるポジティブなものを残していけるか。

 まだ天皇杯出場の条件となる2位以内や浦和が伝統的に目標としているACL圏内の3位も十分に射程圏内にある中で、残り9試合の戦いに注目したい。

(文:河治良幸)

【了】

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