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5得点大勝の記憶はどこへ? リバプールなす術なく完敗、アタランタを前に一体何が起きたのか【CL分析コラム】

チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグD組第4節、リバプール対アタランタが現地時間25日に行われ、0-2でアウェイチームが勝利した。ベルガモでの第1戦は0-5と大勝を収めたリバプールだが、この日は何もできず完敗。一体何が起きたのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

リバプールは完敗

リバプール
【写真:Getty Images】

 試合後にユルゲン・クロップ監督は「難しい試合での当然の敗北」とコメントを残した。また、この日キャプテンマークを巻いてピッチに立ったジェームズ・ミルナーは「僕たちはうまくいかなかった」と話している。

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 現地時間25日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグ第3節、リバプール対アタランタ。前回ベルガモでの対戦時は0-5とプレミアリーグ王者が圧倒していたが、今回は0-2とセリエAの雄が完勝。リバプールはアンフィールドでの連勝記録が途絶えることになった。

 フィルジル・ファン・ダイクを筆頭に複数の主力選手を欠いていたリバプールは、この試合でネコ・ウィリアムズやリース・ウィリアムズ、カーティス・ジョーンズら若手を積極的に起用。コスタス・ツィミカスやディボック・オリギという普段はあまり出場機会のないメンバーもピッチに立っていた。

 ある意味「新鮮」とも呼べる11人で挑んだリバプールだったが、立ち上がりからペースを握ったのはアタランタ。ホームチームは選手それぞれの連係がなかなか噛み合わず、細かなミスを繰り返しては危険なシーンを作られていた。

 そのような状態が長く続いたリバプールは前半をなんとか0-0で終えることができたが、60分についに失点。アレハンドロ・ゴメスの高質なクロスをヨシップ・イリチッチに押し込まれた。

 その直後、クロップ監督はディオゴ・ジョッタ、ファビーニョ、ロベルト・フィルミーノ、アンドリュー・ロバートソンの4人を一気に投入。流れを変えようと試みた。

 しかし、そのわずか3分後に再び失点。途中出場のロバートソンが長身ハンス・ハテブールに競り負け、最後はゴール前でフリーとなっていたロビン・ゴゼンスがプッシュ。リバプールとしては痛恨の一撃だった。

 結局リバプールは最後までリズムを掴めぬままゲームセット。シュート数わずか4本で枠内シュートは0本という、まさに完敗だ。

 なお、グループリーグD組は4試合を終えFCミッティランの敗退が確定。首位リバプールを2ポイント差でアタランタとアヤックスが追うという状況だ。

ガスペリーニの修正力

ジャン・ピエロ・ガスペリーニ
【写真:Getty Images】

 さて、ここまで簡単に試合を振り返ってきたが、この90分間の大きな注目ポイントとなったのはジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の「修正力」だと言えるだろう。

 ベルガモでの第1戦はご存じの通り0-5という大敗だった。同試合のアタランタはリバプールに対しても強気のオールコートマンツーマンで挑み、ラインもかなり高い位置で固定していたが、肝心のプレスがハマらず、スペースを与えすぎたことでズバズバと相手にカウンター決められてしまった。結果的に5失点だったが、あと1、2点奪われていてもおかしくはなかっただろう。

 その試合後にガスペリーニ監督は「我々は過去にやったようなインテンシティーを持っていない。それを補うためにスタイルを変える必要がある」と話していた。また、リバプールとの第2戦を前にした会見では「(前回の)大敗を招いたときと同じようなミスはできない。相手の質は高いが、前回とは違い多くのプレゼントを与えることはない」とコメントしている。

 そしてガスペリーニ監督は上記した2つの言葉通り、今回のリバプール戦では「スタイルを変え」、「前回とは違う」形を見せてきた。

 まず手を付けたのは前回崩壊した守備だ。3-4-1-2というシステムの中、以前のようなハイラインではなく低い位置に最終ラインを固定。成熟しているマンツーマンディフェンスというベースは変えず、プレスの開始場所をより自陣近くに設定するなど、リバプールとって効果的なスペースを明け渡す回数を減らしたのだ。

 こうなると、リバプールは前回のようなカウンターを発揮できず、モハメド・サラーやサディオ・マネらの走力も生きない。攻撃の威力は影を潜めた。またボールを繋いでも、もともとチーム全体として対人守備に強いアタランタを前にすぐさま鎮火。オリギが真ん中で存在感を完全に失うなど、前線の歯車はぶち壊されていた。

 また、この日のアタランタはビルドアップ面でもリバプールを上回った。これまで自陣でのミスが目立って失点することも少なくなかったが、今回はA・ゴメスとマッテオ・ペッシーナという二人の「フリーマン」が存在したことが大きいのか、軽率なミスが起こらずスムーズに前へボールを運べていた。「攻撃は最大の防御」というが、これもリバプールに良い攻撃を与えなかった要因と言える。

 ガスペリーニ監督も試合後に「我々はベルガモでの試合よりもボールの動きが良く、技術的にも正確でミスを繰り返さなかった」と勝因を述べていた。前回はプレスをことごとくリバプールに交わされたが、今回は見事に「お返し」したと言えるのではないか。

狙われた若きサイドバック

 また、リバプールはこの試合でアタランタにとくに狙われてしまったポイントがあった。それが、右サイドバックのネコ・ウィリアムズだ。

 トレント・アレクサンダー=アーノルド不在の中でチャンスを得た19歳がこの日対峙したのは、ロビン・ゴゼンス。あらゆる面でダイナミックなプレーを発揮し、昨季は年間10得点7アシストをマーク。今年9月にドイツ代表デビューを果たしたという、今勢いに乗っている26歳だ。

 このゴゼンスの攻撃力はアタランタの大きな武器となっている。当然ながら、積極的に使っていきたいポイントだ。そうなると、必然的に左サイドにボールが集まる。ネコ・ウィリアムズは、そんな彼らの勢いに飲み込まれたのである。

 試合開始わずか8分、ネコ・ウィリアムズは自身の目の前に立ったA・ゴメスに気を取られ、背後に抜け出すゴゼンスを注意できず。ロングボールを通され決定機を作られてしまった。さらに26分、アタランタはなんと左サイドに4人を集めボールをキープ。最後は中央へ展開し、イリチッチのシュートチャンスを生み出した。

 また、アタランタは右サイドから作って大きく左サイドへ展開。ゴゼンスとネコ・ウィリアムズに1対1の状況を作らせ、そこにA・ゴメスらが絡むことで数的優位を完成させる。このような攻めも、立ち上がりから積極的に行っていた。

 59分の失点シーンでは、左サイドでボールを持ったA・ゴメスに対しネコ・ウィリアムズが強く寄せきれずクロスを上げられた。この場面でもゴゼンスとA・ゴメスの二人に数的優位を作られており、難しい対応を余儀なくされてしまった。

 そして追加点の場面も崩されたのは右サイド。流れてきたペッシーナを止められず、マイナスのA・ゴメスにボールを預けられクロスを許した。この場面ではアタランタの選手3人が左サイドに集結。戻っていたジョッタがA・ゴメスとベラト・ジムシティの2人を見る状況だった。

 データサイト『Who Scored』のスタッツを見ても、アタランタの攻めは中央が17%、右サイドが37%、左サイドが46%となっている。リバプール敗北の責任がすべて右サイド、そしてネコ・ウィリアムズにあるわけではないが、ゴゼンスと19歳の実力差、そこを狙ったアタランタになす術なかったことは事実だ。

 スタメン入れ替えによる戦力ダウンはあったかもしれないが、リバプールとしては受け入れ難い完敗となった。CLのグループリーグは残り2試合。過密日程&故障者続出の中、2018/19シーズン王者は無事に突破できるか。

(文:小澤祐作)

【了】

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