酒井宏樹は何もせず、長友佑都は…。マルセイユが大スランプ。最下位ニームに「惨めな試合」で敗戦【分析コラム】

現地16日にリーグ・アン第20節が行われ、マルセイユはニーム・オリンピックに1-2で敗れた。試合前の時点で最下位だった相手に屈辱的な敗戦を喫した要因とは何だったのだろうか。そして酒井宏樹や長友佑都の現状は…。(文:舩木渉)

2021年01月17日(Sun)14時22分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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3日で発言内容が一転

マルセイユ
【写真:Getty Images】

「内容では我々の方が優っていた。最高のチームが負けたということだ」

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 現地13日に行われたフランス・スーパーカップでパリ・サンジェルマン(PSG)に敗れてタイトルを逃した後、マルセイユを率いるアンドレ・ヴィラス・ボアス監督はチームの戦いぶりを称えた。

 ところが、わずか3日後には「サポーターには本当に申し訳ない」と謝罪する羽目になった。現地16日に行われたリーグ戦で、ニーム・オリンピック相手に1-2で敗れる「惨めな試合」をしてしまったのが理由だった。

 対戦相手のニームは前節終了時点で最下位、しかもリーグ最多40失点を喫していた。「最高のチーム」であるPSG相手に善戦した直後に、「最低」とも言えるチームと戦って敗れたことはマルセイユに大きな失望を残した。

「我々の精神状態は良くなく、(勝利への)欲求が欠如していたことには満足していない。もっとうまくできたはずだ。通常なら、どんな心境でも目の前の試合に勝たなければならない。我々のパフォーマンスは非常に悪く、それによって大きな代償を払うことになった」

 昨年12月中旬からの公式戦7試合でわずか1勝しかできていない。過密日程が続いているとはいえ、約1ヶ月で1勝3分3敗は不甲斐ない成績と言わざるを得ない。消化試合数に違いはあるが、リーグ戦の順位も6位と、マルセイユが本来いるべき場所に立てていないのが現状だ。

 ニーム戦は現在のチーム状況を反映しているかのようだった。

 前半からボール支配率を高めて攻めていたマルセイユだったが、大事なところで選手同士の意図が噛み合わずにミスが発生し、カウンターを食らうことがしばしばあった。スタッツを見ると圧倒的優勢な展開なのにも関わらず、38歳のGKヨアン・ペレのファインセーブがなければ早い時間帯に失点していてもおかしくなかった。

 序盤の18分には中盤の要だったブバカール・カマラが負傷交代を強いられる。そして、チーム全体のリズムが崩れる決定的な要因となったのは35分のPK失敗だった。FWダリオ・ベネデットがペナルティエリア内で相手選手のハンドを誘って獲得した先制の大チャンスだったにもかかわらず、キャプテンマークを巻いていたフロリアン・トヴァンはPKをゴール左に大きく外してしまった。

試合展開に大きく影響したPK失敗

 そもそも本来ならディミトリ・パイェがPKキッカーのはずなのに、今回はトヴァンが蹴った。チーム内の序列に関わるような大きな変更を決断した背景を、ヴィラス・ボアス監督は次のように説明する。

「我々にはルールがある。それはPKを2回失敗するびにキッカーを変えるということだ。パイェは(CLの)ポルト戦とアンジェ戦で失敗し、フロリアンも今日で2度目の失敗だった。したがって、別のPKキッカーを見つける必要がある」

 実はマルセイユはPKを大の苦手としている。直近の4本のうち3本を外しており、成功率25%は今季2本以上のPKを与えられた欧州5大リーグのクラブのなかで最も低い数字だという。「(スーパーカップ)のPSG戦に向けてPKを練習していたが、フロリアンは今日、その時とは逆方向に蹴ることを選んだ」とヴィラス・ボアス監督は首を傾げたが、精神状態の悪さが駆け引きも重要になるPKに影響したとも考えられるだろう。

 というのも、トヴァンは今季限りでマルセイユとの契約が満了となるため、移籍も噂されている。現地メディアによればマルセイユのジャック=アンリ・エイロー会長は「フロリアンには、このチームのキーマンとして我々と戦い続けてもらいたい」と語る一方、「彼はおそらく金銭的待遇の向上を望んでいる」と契約延長交渉がなかなか進んでいないことも示唆している。

 ヴィラス・ボアス監督は「フロリアンはボールを持った時に、契約のことを考えているとは思わない」とプレーへの影響を否定するが、移籍市場が開いている今「心ここに在らず」な状態になっていてもおかしくはないだろう。結果的にトヴァンのPK失敗は、その後の展開に大きな影響を及ぼした。

 もう1つ、特に前線の選手たちがナーバスになる原因はストライカー補強の噂だ。得点力に不安を抱える現状もあって、マルセイユは冬の移籍市場で戦力補強に動くとされている。

 当初はアトレティコ・マドリードを退団したジエゴ・コスタの獲得も取りざたされたが、指揮官自ら「彼は税込で年俸1600万ユーロ(約19億円)を求めているが、我々にそんな額は支払えない」と獲得を否定した。

「知らない番号から『ジエゴ・コスタがマルセイユに来たがっている』というメッセージを受け取って、ジョークかと思った」と接触があったことは認めたものの、やはり高額な給与を保証することは難しかった。

お粗末過ぎたカウンターからの2失点

酒井宏樹
【写真:Getty Images】

 そこで現在、最有力候補と目されているのがナポリで飼い殺し状態が続くアルカディウシュ・ミリクである。このポーランド代表FWが加入するとなれば、他のアタッカーたちはポジションを失う恐れがあるのだから不安に駆られるのは間違いない。ニーム戦ではじっくりとチャンスを作りたい後ろの選手たちと、功を焦る前の選手たちとの間でプレーの意図にギャップが生まれていたのかもしれない。

 失点もお粗末だった。55分の1失点目はペナルティエリア内で足が止まり、クロスに対して逆サイドから入ってきていた相手選手を見失っていた。さらに57分の2失点目は、まず左サイドで相手に突っ込んだ酒井宏樹がかわされたところでズレが生じ、マルセイユは自陣内で数的不利に。一気にゴールを攻め落とされた。

 2点ともニコラス・エリアソンのゴールで、どちらもロングカウンターによって生まれた。マルセイユはボールを失った直後の反応が悪く、前線の選手たちの戻りも遅れ、後手に回った対応がハッキリと見て取れた。ニームが少ないチャンスを生かしたように見えがちだが、必然的に決まったカウンター攻撃である。

 試合前に最下位だった相手に、マルセイユがリーグ戦のホームゲームで敗れるのは1962年以来、59年ぶりのこと。しかも、前回も相手は同じニームだった。屈辱的な敗戦を喫したことで大スランプは白日の下に晒され、ヴィラス・ボアス監督の立場も怪しくなってきている。

 日本人選手たちも正念場だ。フィオレンティーナから期限付き移籍で加入したばかりのDFポル・リロラがフランス・スーパーカップでデビューを飾り、好プレーを見せたことでニーム戦にも右サイドバックで先発出場。それによって酒井は左に回り、失点に関与するなどあまりいいところはなく、66分に交代でベンチに退いた。ここのところ出場機会を増やしていた長友佑都はベンチに座ったまま試合終了の笛を聞くこととなった。

「契約満了が近い選手、新たに加入する選手、チームを離れる選手もいる。新型コロナウイルスの影響もあるかもしれない。これらがおそらく我々が(敗戦によって)代償を払うことになった理由だろう」と指揮官は分析するが、近からず遠からずといったところだろう。

 確かに移籍に関連して調子を崩している選手もいるが、PKキッカーを決める過程のようにコロコロと方向性やチームへの見方が変わる監督のマネジメントにも問題がありそうだ。最下位のニームに2点を先行され、拙攻が続いた末に反撃は終盤に相手のミスから得た1点どまり。前線をごっそり入れ替えた66分の4枚替えも

 ロッカールーム内に漂うどんよりとした負のムードや不信感を取り除けなければ、大スランプを抜け出すどころか、どんどん深刻な不振に陥っていってもおかしくない。

(文:舩木渉)

【了】

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