「J1は世界と真逆に進んでいる」。スプリントしなくても頂点を目指せるガラパゴスなリーグだった【データアナリストの眼力(2)】

3/8発売『フットボール批評issue31』から、最先端の戦術コンセプトを独自の分析で一枚の絵に表現してきた“異端のアナリスト”庄司悟氏の連載より、Jリーグ各クラブのコンセプトを浮き彫りにしてみせた「フットボールの主旋律」を発売に先駆けて一部抜粋して全3回で公開する。今回は第2回。(文:庄司悟)

2021年03月02日(Tue)10時30分配信

シリーズ:データアナリストの眼力
text by 庄司悟 photo Getty Images
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世界に離されるJリーグ…わずかな光明は?

図16_fch
図16

 ここからは、いよいよ村井チェアマン同様に、Jリーグと世界とのコンセプトの違いを明らかにしていく。今回の座標軸はパス成功数(縦軸)×スプリント数(横軸)とした。ちなみにスプリント数はJ1しか公開されておらず、すなわちJ1と世界の比較となる。

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 まずは昨季のチャンピオンズリーグ王者バイエルンが戦うドイツ・ブンデスリーガ(2020/21シーズン第17節終了時点)の図16を目に焼き付けてもらいたい。1位バイエルン、2位RBライプツィヒ、3位レヴァークーゼン、4位ドルトムントと、見事なまでに上位クラブは右上のゾーンに集約している。

 走りながらパスも繋がるという現在の〝ブンデスカラー〞に至ったのは、前記したとおり、グアルディオラがユニット「ペンタゴン3」を編み出したからに違いない。事実、その「ペンタゴン3」によって、パス=テクニカル、スプリント=フィジカル両方のつるべが上がった。グアルディオラのおかげもあり、今やドイツにおいてパスとスプリントは「対峙する要素」ではなくなっている。

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図17

 対してJ1(図17)はどうか。1位川崎は左上、2位G大阪、3位名古屋、4位C大阪にいたっては左下のゾーンとまるでバラバラである。昨季のCL王者が所属するブンデスリーガを世界の潮流と仮定するならば、J1は明らかに世界とは逆の方向に進んでいることがわかる。スプリントを増やさなくても頂点を目指せるガラパゴスなリーグと言い換えてもいい。

 ただ、わずかな光明が9位横浜F・マリノスの存在である。昨年は成績こそ振るわなかったものの、2019年から引き続きパスとスプリントを両立させ、世界の潮流にはしっかりと乗っている。シティ・グループの庇護下にあるクラブだけあって、世界を見据えていることはこの分布からも大いに伝わってくる。

J1に圧倒的に足りていない要素とは?

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図18
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図19

 では次の座標軸はどうだろう。今度はボール支配率(縦軸)×走行距離(横軸)の座標軸を用意した。ブンデスリーガ(図18)を見てもらえばわかるとおり、王者バイエルンの走行距離は何と下から数えて2番目で、実際のところそこまで走っていない。

 J1(図19)と比較しても、川崎もバイエルンと同じような位置におり、「なんだ、結局バイエルンも川崎と同じようなコンセプトじゃないか」というツッコミが聞こえてきそうだ。しかし、これは壮大なる引っ掛けである。

 先程のパス成功数(縦軸)×スプリント数(横軸)の座標軸を振り返ってほしい。バイエルンは右上のゾーンで、川崎は左上のゾーンだったはず。走行距離は下から2番目でスプリントはトップのバイエルンは、質、強度が高い密な走りに注力していたというわけだ。

 川崎がやっているフットボールを「止めて蹴っている」とするなら、バイエルンは「走りながら蹴っている」と表現することが可能だろう。もし、川崎の風間八宏前監督が「止めて蹴る」に、あとひと単語「走りながら」を付け加えていれば……。その影響力を考えれば、惜しいことをした、と思わざるを得ない。

 つまり、J1には強度の高い走り、インテンシティの高い走りが圧倒的に足りていない。例えばJリーグで5、6人が一斉にスプリントするシーンを見たことがあるだろうか? 横浜FMにしてもスプリント、走行距離ともにトップで、走りの重要性には気付いているとはいえ、まだその走りにメリハリがないのが現状といえる。

(文:庄司悟)

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【了】

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