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Jリーグ 3年前

FC東京はなぜセレッソ大阪に逆転勝利できたのか? CBからMFへ、森重真人が遂行したミッション【コラム】

明治安田生命J1リーグ第2節、FC東京対セレッソ大阪が6日に行われ、3-2でFC東京が逆転勝利を収めた。センターバックとして先発した森重真人は、後半からアンカーでプレーして攻撃を活性化。日本代表41試合出場の実績を誇るベテランは、FC東京に今季J1初勝利をもたらす活躍を見せた。(取材・文:元川悦子)

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

停滞感の漂う前半のFC東京

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【写真:Getty Images】

「(2月27日のJ1)開幕の浦和戦は自分たち本来の姿を見せられなかった。『もっとできるよね』とみんなとも話したけど、特にボールを取りに行くところでチグハグになった。全員がもっと理解して動かないと後手後手になる。チームはもっとよくなるし、状態を上げていければいい」

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 1-1のドローに終わった初戦の反省を踏まえながら、FC東京の森重真人はJ1初勝利を目指して6日のホーム・セレッソ大阪戦のピッチに立った。

 彼らの最大のタスクは2戦3発と絶好調の大久保嘉人を封じること。最終ラインでコンビを組む渡辺剛も「背後への抜け出しとかクロス対応は気を付けていかないといけない」と警戒心を募らせていたが、38歳の点取り屋は想定を上回る鋭い動き出しで、開始14分に一撃を決めてきた。

 この1点が重くのしかかり、FC東京には停滞感が漂った。長谷川健太監督が嘆いていたように、外国籍選手のコンディションも上がり切っていない様子で、1点のビハインドを背負った状態で前半を折り返すことになった。

 そこで指揮官が採った策が森重のアンカー起用だった。昨季のAFCアジアチャンピオンズリーグ、1月4日のYBCルヴァンカップ決勝でも背番号3は中盤の要として異彩を放ったが、この日も彼が一列前に出ることで、試合の流れがガラリと変わったのだ。

「(相手の)中盤の人数が多くなるので、そこで清武(弘嗣)選手をどう捕まえるのか。大久保選手の出入りをどう捕まえるのか。前半は捕まえきれなかったので、後半はその仕事を整理して、かつ中盤でボールを落ち着かせるところを意識して入りました」

森重真人のアンカー起用が奏功

 冷静沈着な判断が奏功し、FC東京はボールが前に出始める。中村帆高と小川諒也の両サイドバックが高い位置を取る回数が増え、レアンドロやディエゴ・オリヴェイラも推進力も高まってきた。

 そして54分に田川亨介が相手守護神、キム・ジンヒョンのミスを突き、同点弾を叩き出す。直後に原川力に2点目を奪われたものの、FC東京は攻撃の手を緩めなかった。レアンドロの華麗な直接FKで2-2に追いつき、さらに永井謙佑と三田啓貴を投入することで、一気に畳みかけたのだ。

 中2日の関東往復をほぼ同じメンバーで戦い、疲労困憊となった相手を追い詰めた後半ロスタイム。勝負を決めたのは森重だった。レアンドロのFKに対し、迷わずニアに飛び込み、頭を合わせた。レヴィー・クルピ監督は「ヘディングが強い」新戦力・進藤亮佑を試合途中に送りこんでいたが、その進藤も森重の打点の高いヘッドを防ぐことはできなかった。

「レアンドロのボールがよすぎた。ちょっとコースを変えるだけで入ると思ったので、走り込めばと。イメージとボールが一致した。あのゴールで勝てたのは大きかった」と本人もしてやったり。森重の2試合連続ゴールが決まり、FC東京は待望の今季J1初勝利を挙げることができた。

「まだまだ老け込んでいられない」

 2点に絡んだレアンドロの活躍度も大きかったが、それ以上に森重は圧巻だった。長谷川監督も「森重がアンカーに入ってから昨年のいい時みたいにボールが動いた。アグレッシブなサッカーができた」と太鼓判を押す。彼の戦術眼の高さ、守備のポジショニング、長短のパスが劣勢を跳ね除ける原動力になったのは間違いない。

 それに加えて、得意のヘッドで決勝弾を叩き出したのだから文句のつけようがない。「今季はリーグ全試合出場が目標です」と言い切る男の充実感が見て取れた。

 J1トップDFに君臨し続ける彼も5月で34歳になる。「この年齢になってもサッカーができていることを感謝したいし、まだまだ第一線でやりたい。自分らベテランも『まだまだできるんだ』『必要とされているんだ』という価値を見出していかないといけない」と昨年末に語気を強めていた。30代半ばになり、インテリジェンスや読みに一段と磨きがかかっているようだ。

 周りを見れば、浦和レッズ戦で39歳の阿部勇樹がゴールし、今回対峙した38歳の大久保も3試合4得点と気を吐いている。1つ上の家長昭博、同い年の小林悠(ともに川崎)も結果を残しているだけに、「自分もまだまだ老け込んでいられない」という思いが強まっていることだろう。

「プロ16年目となる今季の一番の目標はリーグタイトル」と断言する男にとって、2019年にあと一歩で逃した王者の座は悲願に他ならない。そこに辿り着くためにも、自身のレベルをさらに引き上げ、チーム全体のパフォーマンスを引き上げるように仕向けていく必要がある。

 年明けのルヴァン制覇時に「タイトルまで物凄く長かった。優勝できてホントに嬉しい」と心底喜んでいた森重は、2021年末を再び満面の笑みで迎えられるのか……。全ては彼の一挙手一投足にかかっていると言っても過言ではない。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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