サガン鳥栖躍進の要因は? 「ボールをどれだけ持っていても勝てない」、川崎フロンターレにも貫いた姿勢【英国人の視点】

サガン鳥栖が好調なスタートを切った。開幕から6戦連続無失点を記録し、9試合を消化した時点で4位につけている。浦和レッズや柏レイソルを撃破し、セレッソ大阪や川崎フロンターレといった上位陣にも健闘。金明輝監督が指揮を執るチームは積極的な姿勢を貫いている。(取材・文:ショーン・キャロル)

2021年04月13日(Tue)9時28分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
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サガン鳥栖はなぜ注目を集めているのか?

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【写真:Getty Images】

 2週間ほど前、サガン鳥栖はリーグ開幕から6試合無失点という衝撃的な守備の好調ぶりで大いに称賛を集める存在となっていた。

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 4月2日のセレッソ大阪戦に0-1で敗れ、1996年の横浜フリューゲルスと並んでいた記録を塗り替えることはできなかった。とはいえ、金明輝監督が九州の地で実現させている、驚異的な仕事の価値が失われることはあろうはずもない。

 鳥栖の守備の堅固さはもちろん見事なものではあるが、彼らが試合に臨むアプローチそのものも特筆に値する。セーフティーファーストだった従来の戦い方を捨て、より積極的な戦いで対戦相手に関わらずポゼッションを支配している。

 例えば、セレッソに敗れた試合を振り返ってみよう。アウェイでの戦いではあったが、鳥栖はボール保持率で相手を上回った。さらに驚くべきことに、77分のファン・ソッコの退場で1人少なくなった試合終盤もボールを握り続けた。パス本数でもセレッソ大きく上回り、相手ペナルティーエリアに侵入する回数においてもセレッソを凌駕していた。

 しかし、選手たちは印象的な戦いぶりにも満足することはなかった。この試合からもっと良い結果を得るべきだったという部分を強調していた。

「ボールをどれだけ持っていても勝てないし、点を取らないといけない。今日みたいにあれだけ自分たちでボールを持っていてもセレッソみたいに1つのチャンスをモノにできる選手がチームに1人でもいたら勝てる」と林大地は語る。

王者フロンターレにも貫いた姿勢

 売出し中の若手スター中野伸哉も同様に、ホームでアビスパ福岡と0-0のドローに終わった前節に続いて、この日の結果に落胆する様子を見せていた。

「今日は相手に引かれて自分たちは後ろでボールを回すだけだった。もっと前で狙ったり、クロスを上げたり、シュートを打つ。そういうことをもっと増やしていかないとゴールは奪えないのかなと思います」

 もちろんこういったコメントは、敗戦後の単なる決まり文句のようにも聞こえるかもしれない。たとえ事実に反している明らかな証拠があろうとも、世界中のほぼ全てのチームが、全ての試合に勝つつもりで戦っていると言い張るものだ。だが鳥栖が新たに身につけた積極姿勢を徹底していることは、その次に行われた絶対王者川崎フロンターレとのアウェイゲームでも確かに見て取ることができた。

 昨今のフロンターレと対戦するチームは、ポゼッションを支配されて大半の時間で劣勢を強いられることを理解している。相手にミスが生じる可能性に期待するか、どこかのタイミングで速攻を仕掛けるしかないと考えている。だが鳥栖はそんな台本に従おうとはしなかった。

 前半のボール支配率はほぼ同じだった。またDAZNの中継中に示された数字によれば、前半45分間のシュート数は川崎Fの5本に対してアウェイチームが6本(枠内シュートはそれぞれ2本と3本)。パス本数でもわずかにフロンターレを上回っていた(284本と291本)。

 個々の選手たちを分析してみても、今季も首位を走る昨季王者に対して、鳥栖が試合の主導権を握る意図を持っていたことが浮き彫りになる。セントラルMFの松岡大起(31本)と島川俊郎(26本)のパス本数は、相手の脇坂泰斗(25本)と田中碧(21本)のコンビを上回っていた。

 近年のフロンターレがこういった部分で相手に遅れを取った試合はそう多くはないはずだ。さらに鳥栖は後半にも同じテーマを掲げて臨み、後半の立ち上がりはボールを握ってプレーする時間が続いた。

 だが残念ながら、2試合連続となるセンターバックの退場処分でその流れは断ち切られることになってしまう。57分に田代雅也が退場を命じられたあとはフロンターレが鳥栖から主導権を奪い取ることに成功し、8分後には交代出場の遠野大弥がこの試合唯一のゴールを挙げた。

サガン鳥栖の前を向く「意識」

 鳥栖は昨季のリーグ戦でフロンターレに敗れることのなかった唯一のチームであり、2試合ともに勝ち点1を獲得していた。だが2020シーズン開幕戦のアウェイゲームではボールを握られ、シュート数で24本対5本と圧倒されている。0-0のドローで乗り切れたのは幸運だった。

 長く過酷なものとなった昨季の終盤に迎えた再戦では1-1で引き分けた。この試合では、冒険的なスタイルへの変化の兆しが感じられたことも確かだ。とはいえその時点では、鳥栖がそれほど勇敢なアプローチを追求し続けていくと予想できた者はごくわずかだった。だがフロンターレに敗れた試合後の松岡の言葉は、彼らが今後もこの方向へ進んでいこうとしていることを感じさせた。

「積極的に前を見ていこうというのは、練習でのコーチングスタッフや選手たちの声でも、そういったふうに意識的にやってきました。自分の中では、しっかりそこのパスを通して、怖いパスを出さないとボランチの選手として怖くないと思っています」と松岡は、等々力で鳥栖が見せた積極的な戦いぶりについて話していた。

 続いての試合では横浜FCが松岡やその仲間たちの犠牲となった。4月11日の試合は、松岡のアシストからのゴールも含め、得点力を取り戻した鳥栖が3-0で快勝。このレベルのパフォーマンスを継続していくことができれば、今季の戦いが進んでいく中で鳥栖は間違いなく注目すべきチームのひとつとなりそうだ。

(取材・文:ショーン・キャロル)

【了】

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