“ヌルヌルドリブル”炸裂も…三笘薫は危機感を持っている。川崎フロンターレで4月3得点も「満足していられない」理由【コラム】

明治安田生命J1リーグ第10節、川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島が18日に行われ、1-1の引き分けに終わった。6連勝を逃したものの、川崎は開幕から12戦無敗を達成。しかし、U-24日本代表で海外の選手との対戦を経験した三笘薫は、さらなる向上を果たすべく戦っている。(文:元川悦子)

2021年04月19日(Mon)10時36分配信

シリーズ:コラム
text by 元川悦子 photo Getty Images
Tags: , , , , , , , , , ,

川崎フロンターレの先制点は「ヌルヌルドリブル」

三笘薫
【写真:Getty Images】

 2月20日の富士ゼロックススーパーカップ・ガンバ大阪戦を皮切りに、2カ月間で公式戦13試合という超過密日程を無敗で乗り切ってきた王者・川崎フロンターレ。4月18日のJ1・サンフレッチェ広島戦は序盤戦の総決算と位置付けられた。

【今シーズンのJリーグはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 このゲームに負けなければ、昨季作った11試合無敗の記録を更新することになる。が、「1試合3点以上取って勝つ」を合言葉にしている鬼木達監督にしてみれば、白星での新記録達成というのが理想だったに違いない。

 前半だけは見れば、そのシナリオは容易に達成できそうに思われた。序盤からボールを支配し、攻め込んだ川崎はU-24日本代表守護神・大迫敬介の守る敵のゴールに迫り続ける。前半だけで放ったシュート数はなんと13本。広島はゼロだったから、どれだけ一方的な内容だったか分かるだろう。

 しかし、彼らが奪った得点は前半38分に家長昭博が決めた1点だけ。不完全燃焼感が残ったものの、貴重な先制点の起点を三笘薫が作ったことは、特筆すべき点と言っていい。

 始まりは左サイドでのゆっくりとしたドリブルだった。青山敏弘や野上結貴、ハイネルらのマークが集まったが、背後に山根視来が走り込んでくるのを見逃さなかった。三笘からスルーパスを受けた背番号13が左足を一閃。これは大迫に弾かれたが、こぼれ球を拾った山根が脇坂泰斗へ。続いて家長がフリーで受け、ネットを揺らした。

「ヌルヌルドリブル」と言われる三笘の緩急を駆使したボールコントロールがまたも威力を発揮した格好だ。本人は淡々としていたが、「Jリーグではできて当たり前」という認識なのかもしれない。

2ゴールでも表情を変えず

 実際、最近の三笘の気迫と闘争心は本当に凄まじい。U-24日本代表としてプレーした3月26日のU-24アルゼンチン代表戦では、自分らしさを出せなかった。その悔しさを脳裏に刻み付け、ピッチに立っているのだろう。

 代表活動直後の4月3日の大分トリニータ戦で2得点を叩き出してヒーローになった時も、「アルゼンチン相手になかなか自分のプレーができず、他の選手ができていた中で悔しい思いはありました。相手は違いますが、ピッチ上で、Jリーグで結果を出すしかないと思ってやっていました」と試合後会見で語ったが、表情は硬いまま。一切、ニコリともしなかった。

 三笘は11日のFC東京との多摩川クラシコでもゴールを挙げている。4月だけで合計3点を叩き出しているものの、「国内で圧倒的な存在感を示し続けなければ、海外で戦っている仲間に置いていかれる」という危機感が強いせいか、ピッチ上でも険しい表情が目立つ。本人の中では、現状は満足できるレベルとは程遠いのかもしれない。

 広島戦でも先制弾の家長に続いて自らもゴールを決められたら、少しは納得に近づいたのだろう。しかし、登里亨平のクロスを確実に沈めた後半10分の自身の得点がVARとオン・フィールド・レビューによって取り消され、彼の悔しさはひと際、募った。

 そこに追い打ちをかけるように、広島のFWジュニオール・サントスが個人能力の高さを見せつけてきた。ブラジル人助っ人の強引な突破から同じ東京五輪世代の森島司が同点弾をゲット。川崎は結局、1-1のドローという結果を余儀なくされたのだ。

「満足していられない」、三笘薫が危機感を抱く理由

 リーグ12試合無敗の新記録は作ったものの、後味の悪い結末だったのは間違いない。「1点だけでは何かが起きてしまうということが出たゲーム。決定機を決められなかったのは自分たちの課題」と鬼木監督もコメントしていたが、三笘も全く同じ思いだったのではないか。VARによるゴール取り消しはやむを得ないにしても、もっともっと得点できるチャンスは作れたはず。それを突き詰めていくことが肝要なのだ。

 リーグ12試合終了時点で4ゴールという数字は、年間13得点を奪った2020年と同等ペース。決して悪くないのだが、つねに高い領域を見据える男にとっては物足りないのだろう。

 確かに周りを見渡せば、同じ東京五輪世代の前田大然がすでに7ゴールを挙げている。もちろん最前線でプレーすることの多い前田と、左サイドを主戦場とする三笘では役割やチャンスの数が異なる。ただ、ペナルティエリアに侵入する回数を増やすことは可能で、そうすれば自ずと得点機会も多くなる。卓越したドリブル突破という武器に加え、フィニッシュの部分をより研ぎ澄ませていくこと。それが三笘の思い描く領域に近づく早道と言っていい。

「自分は五輪代表の”エース級”だとは全く思っていません。僕も仲間の背中を追っている立場。1つ年下でも世界に行ってる選手がいるし、世界で活躍している選手が多くいる中、満足していられないなと。世界で見たら自分も若くないですし、危機感を持ってやりたいです」

 U-24日本代表の活動時にもチャレンジャーであることを改めて強調していた三笘。その姿勢を持ち続けることが、世界基準に到達するための必須条件だ。貪欲に泥臭くゴールに突き進み、いざという時に結果を残せる怖い選手になることができれば、川崎はさらに無敗街道を驀進するだろう。

 その先には、彼自身の五輪代表入り、そしてネクストステップも見えてくる。今夏の海外移籍有力候補と目される男は果たしてどのような決断を下すのか……。その動向も含め、今後の一挙手一投足から目が離せない。

(文:元川悦子)

【了】

新着記事

↑top