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Jリーグ 3年前

U-24日本代表の守護神はさらなる高みへ。谷晃生が湘南ベルマーレに勇気を与える、川口能活を思わせるビッグプレーとは?【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

勇気を与えた谷晃生のビッグプレー



「ピンチは必ずある。そこをしのげた時、『僕らには勝ちが必要だ』とみんなが言っていた。谷選手の好守というのは勇気になったというか、そういう大きいプレーだったと思います」

 そうやって最後尾からチーム全体を鼓舞し、エネルギーを与えるのが、守護神の大きな役目と言っていい。

 実際、谷自身も直前の64分にユンカーに左ポスト直撃の強烈シュートを打たれており、精神的に動揺していてもおかしくなかった。それでも平常心を保ち、1つ1つのプレーに全神経を研ぎ澄ませていたからこそ、3本連続セーブという大仕事を果たせた。まさに鈴木彩艶が言っていた通りの「集中」を彼はピッチ上で体現してみせたのだ。

 湘南はここから反撃ののろしを上げる。浮嶋敏監督の選手交代と左右のワイド入れ替えという策が奏功し、70分にはウェリントンが同点弾をゲット。さらにはラスト3分というところで、途中出場の岡本拓也が古巣を打ち破る3点目を叩き出し、見事な逆転勝利を手にしたのである。

 2点に鈴木彩艶が絡んだことで、若きGK対決の明暗は大きく分かれる結果となった。それでも、GKというのは、トライ&エラーを繰り返しながら成長していくものだ。「時間は止まらないですし、次にゲームが来ることは分かっている。下を向いていても仕方がない」と敗戦後に号泣した18歳の守護神は自らに言い聞かせたが、これは谷の脳裏にも刻み付いているに違いない。

 こうやって同世代のGKがお互いに刺激し合いながら切磋琢磨することで、日本のGKのレベルは確実に向上する。それを確認した川口コーチは安心して埼玉スタジアムを後にしたのではないか。

 明日には東京五輪メンバーが明らかになる。谷の選出は確実視されるが、ここで満足していてはいけない。今回の浦和戦のユンカーのような百戦錬磨のFWを封じてこそ、高みに到達できる。日本にメダルを取らせようと思うなら、貪欲に上を目指さなければいけない。20歳の守護神の人生を賭けた勝負はここからがスタートだ。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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