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吉田麻也を驚かせた森保一監督の英断とは? 信頼は絶大「選手のことをここまで考えてくれる監督はいない」

text by 編集部 photo by Getty Images

森保一
【写真:Getty Images】



 日本代表は現地7日、カタールワールドカップのアジア最終予選でサウジアラビア代表と対戦する。

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 今回のサウジアラビア代表戦と12日に予定されているオーストラリア代表戦は、最終予選前半の大一番だ。9月にオマーン代表戦で敗れたため、これ以上勝ち点を落とすようなことがあれば日本代表のカタールワールドカップ出場権獲得はかなり厳しくなってしまう。

 そんな状況で、日本代表を率いる森保一監督には多方面から批判が集中している。特に9月のオマーン代表戦以降は、風当たりがさらに厳しくなった。

 だが、選手たちからの指揮官への信頼は一切揺らいでいない。6日にオンラインで取材に応じたキャプテンのDF吉田麻也は「批判されない代表監督はいないと思うんですよね。ドイツでも、ブラジルでも、スペインでも批判されると思うので。もちろん森保監督も就任前からその覚悟があったと思いますし、今も持っていらっしゃると思います」と持論を述べる。

 そのうえで「僕もいろいろな監督とやってきましたけど、その中でも本気で選手のことを考えてくれる監督は僕のキャリアの中でも少なかったです。その数少ない1人が森保監督だと思うし、選手ファーストでここまで考えてくれる監督はいないんじゃないかなと思います」と語った。

 なぜこれほど厚い信頼を寄せられるのか。「選手ファースト」の考え方を持った森保監督らしいエピソードを、吉田は1つの例として挙げた。それは今年9月のことだ。

「最終予選の初戦の大事な試合で、(日本代表の)レギュラーで出ている選手個人のキャリアを重視して1試合スキップさせたのは、あの立場である監督がなかなかできる決断ではないなと思うので、すごいなと」

 ここで吉田が言及した「レギュラーで出ている選手」というのは、DF冨安健洋のこと。8月末時点でイタリア・セリエAのボローニャに在籍していた同選手は、ちょうど代表合宿が始まるタイミングで迎える夏の移籍市場閉幕ギリギリまで他クラブへ移籍する可能性があった。

 その交渉や手続き、現地でのメディカルチェックなどを優先させるため、森保監督は冨安に欧州残留を許可。すると移籍市場最終日にプレミアリーグの名門アーセナルへ移籍することとなり、移籍期限内に全ての必要なプロセスを完了させることができた。

 あれから1ヶ月、冨安は早くもアーセナルでチームに欠かせない選手となりつつある。キャリアの分岐点となりうる時期に、選手個人の事情を尊重して大事な代表戦を欠場することすらも認めた。日本代表の目の前の勝利だけを重視するなら、強引にでも冨安をチームに合流させる判断も決して否定はできない。だが、森保監督は未来を見据えて英断を下した。

 吉田は「だからこそ神輿を担ぎたいなと思う監督であることは間違いないです」と語る。強く結ばれた信頼関係が崩れ、チームが壊れていく気配はない。選手個々の成長を促しつつ勝利という結果を残すことで、選手たちと森保監督の結束はより強くなっていくだろう。

 7日のサウジアラビア代表戦と12日のオーストラリア代表戦。この2連戦を勝ち抜くことは、日本代表にとってチーム力向上のスピードを上げるための重要なきっかけとなるに違いない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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