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南野拓実が抱いていたゴールの予感的中。サッカー日本代表で8ヶ月ぶり復活弾、4-3-3で見出した活躍の道【W杯アジア最終予選】

text by 編集部 photo by Shinya Tanaka

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南野拓実
【写真:田中伸弥】



 サッカー日本代表は1日、カタールワールドカップのアジア最終予選でサウジアラビア代表に2-0の勝利を収めた。

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 先制ゴールは32分に生まれた。中盤でのボール奪取からMF伊東純也がDF酒井宏樹へつなぎ、酒井はすぐさま食いついてきた相手の左サイドバックの背後のスペースへパスを送る。そして、伊東が飛び出すと、相手センターバックのカバーリングを振り切ってマイナス方向へ低く鋭いクロスを上げた。

 ゴール前でFW大迫勇也がスルーし、ボールは逆サイドから走り込んでいたMF南野拓実のもとへ。左ウィングで先発出場した背番号10が落ち着いた切り返しでDFをかわしてシュートを放つと、GKに当たったボールは勢いこそ落ちたものの、そのままゴールに吸い込まれていった。

 南野にとっては昨年6月以来、約8ヶ月ぶりの日本代表でのゴールとなった。アジア最終予選ではノーゴールが続いていており、昨年10月に4-3-3のフォーメーションが導入されて左ウィング起用がメインになってからは低調なプレーも目立っていたが、8試合目にしてついに初ゴールを奪った。

「確かにチャンスはあったし、それを決めるかどうかでもあるので、個人的には次に向けてすごく改善したいことの1つですね。こういう(4-3-3の)フォーメーションになってから、試合を重ねるにつれて確かによくなっている部分もあるし、チームメイトとこういうポジションを取るという共有も多くなっていると感じているので。だからこそ次の重要な一戦で結果で示すことができればいいと思います」

 南野はサウジアラビア戦を前にしたオンライン取材の中で、このように述べていた。ゴールから遠ざかってはいたが、4-3-3の中で自分が力を発揮できる場所を見出しつつあったのだろう。先月27日の中国代表戦でも、左サイドから中央へ絞り気味のポジションから攻撃に絡んでいくプレーが多く見られた。

「前回の試合(中国戦)であれば押し込んでいるので、ビルドアップに自分が下りて参加したり、ワイドに張って相手のディフェンスラインを下げなくてもいいので、中の自分が一番得意なスペースでどうやって前を向けるか。そして、サコくん(大迫勇也)がボールを持った時に、どれだけ近くでプレーできるのか。自分が走ったスペースを(長友)佑都くんが使えるようにプレーできるのか。佑都くんにもなるべく高い位置でプレーして欲しいので、そういうポジショニングになっていると思います」

 サウジアラビア戦でも中国戦と同様、左サイドのユニットは南野がより大きな力を発揮できるように設計されていた。左サイドバックには縦への突破力を備えるDF長友佑都が起用され、インサイドハーフのMF田中碧が組み立ての局面をサポートする体制に。

 試合開始時は右に田中、左にMF守田英正というインサイドハーフの並びだったが、彼らが流れの中で立ち位置を入れ替え、南野や長友をサポートしやすい形に変えたという。守田は「どちらかというと、(田中)碧の方が(ディフェンスラインの近くまで)下りたり、相手を正面に立たせた上でのビルドアップや、相手の足を止めてからボールを逃がすような作業するのがうまい」と、左サイドを活性化するためのポジションチェンジの背景を説明する。

 南野自身もサウジアラビア代表の特徴を分析しつつ、いかにゴールまでたどり着くかイメージを膨らませていた。試合前には、次のように語っていた。

「サウジアラビアはビルドアップから、しっかりサッカーをしてくる。それに対して守備の部分ですね。4-3-3でやっている部分もあるし、(相手の)形が(前回対戦時と)少し変わってプレーする可能性もある。なので、プレッシングの行き方が1つ鍵になるのかなと。相手にいいプレッシャーを与えて、ショートカウンターになれば、自分たちが前回よりいい形にできるんじゃないかなと思います」

 実際に「ショート」とまではいかないものの、南野はカウンターからゴールを奪った。「試合を重ねるごとによくなってきている手応えも感じてはいます。でも、もっとよくできるなとも感じるし、個人的にはもっと自分の良さを出していければと思います」という試合前の予感が正しかったことを結果で証明して見せた。

 サウジアラビア戦後のフラッシュインタビューでも南野は「中盤のポジションで前を向いてゴールに仕掛けていくとか、ペナルティエリアの中で仕事をするとか、佑都くんがなるべく高い位置でプレーできるようにとかは前の試合から改善できた」と手応えを語った。

 決して左サイドでのプレーは得意ではないだろうが、左サイドを起点に自分の能力をチームのために還元できる道筋が見えてきた。

「最終予選でまだゴールを奪えていなかったことに対してそこまで気負っていたわけではないですけど、チームのためにゴールで貢献したいという気持ちがあった」と語る南野の復活は、カタールワールドカップ出場に近づく日本代表への強烈な追い風になるはずだ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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