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「時が止まった」スーパーゴールよりも意味のある1点。仲川輝人の完全復活を象徴する「マリノスの形が見える得点」とは

text by 編集部 photo by Getty Images

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仲川輝人
【写真:Getty Images】



仲川輝人、開幕2戦3発で横浜F・マリノスをけん引

「ここ数年思うような結果というか、自分が満足する結果や数字を残していないので、今年はその悔しさをバネにやっていかないといけない。本当に勝負の年だと思って意気込んでいます。だから今年こそは2019年みたいに、いい活躍ができるように頑張っていきたいと思っています」



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 2022シーズン開幕に向け、並々ならぬ決意を口にしていた横浜F・マリノスのFW仲川輝人が最高のスタートを切った。

 今月19日に行われたJ1リーグ第1節のセレッソ大阪戦で今季初ゴールを挙げると、続く23日にはJ1第9節(繰り上げ開催分)の川崎フロンターレ戦で2得点を奪い、4-2での今季初勝利に大きく貢献した。

「点を取れる時って、『いるところにいる』というか。自然とボールが来るところにいるという、自分が点を取っていた時の感覚をやっと取り戻してきた感じはあるので、点を取れたと思います。この感覚をもっと鋭くしていって、ゴールの嗅覚というのを高めていければ、自分の目標は達成できそうかなと思います」

 セレッソ戦の後にそう語っていた仲川は、ここまで2試合で3得点。今季の目標である背番号と同じ「23」得点達成に向けて、順調にゴールを積み重ねている。

 フロンターレ戦の2点目は、自ら「時が止まった感じで、入っちゃったの? みたいな」と語るスーパーゴールだった。左サイドからカットインして右足を振り抜くと、鋭くカーブのかかったボールはGKチョン・ソンリョンも届かない際どいコースに飛び、ゴール右上隅に吸い込まれていった。

 だが、本人も「10回に1回出るかくらいのシュート」と驚いた一発より、個人としてもチームとしても重要な意味を持ちそうなのはフロンターレ戦の58分に決めた1点目の方だ。右サイドを突破したFWエウベルの鋭いクロスにゴール前で合わせた逆転ゴールは、仲川が今後もゴールを量産していくうえで指標となる形だった。

「点を取るポジションがいいと、ボールも自然ときます。自分たちのスタイルというか、『こういう動きをしたらここに入ってこい』とか、ダイレクトでGKとディフェンスの間にクロスを上げる約束事というのは、ボス(アンジェ・ポステコグルー前監督)が来てからずっと言われていること。それをケヴィン(・マスカット)監督が来てからもずっと継続してやってきていて、今日の得点にもつながったと思いますし、それが今日の僕の1点目です」

 仲川はセレッソ戦でもFWアンデルソン・ロペスの右からの折り返しに合わせる形でゴールを奪っている。その試合後には「(前田)大然も左ウィングの時に結構中でプレーしていて、点を取っていた。ウィングがセカンドストライカーというか、センターFWがニアサイドで潰れて、その後ろにしっかり入っていくことも、ケヴィン監督はずっと言っているので、それを今日表現できたかなと。自分が点を取れた形なので、それをどんどん続けていくことが大事」と話していた。

 そして、フロンターレ戦でも同じように右サイドからのクロスに対してゴール前に入っていくことで逆転勝利のきっかけを作った。ゴールをお膳立てしたエウベルも、仲川が「いるところにいる」のを信じていたという。

 試合後に「マリノスの形は確かに見える得点シーンだったと思う」と語った背番号7は、次のように続ける。

「クロスを上げる時、僕たちのチームのウィンガーはFWのようにゴール前にいることを信じて、見ずにクロスを上げる。ピンポイントで合って、すごくよかったと思う」

 リーグ優勝を成し遂げ、JリーグMVPも勝ち取った2019年を境に、ここ2年は度重なる負傷に悩まされ、かつてのような活躍を見せられずにいた。「今年こそ」という思いで臨む2022年、新しいポジションに挑戦する仲川は再びマリノスの攻撃におけるキーマンとなった。

 開幕からの2試合で複数の得点パターンを披露し、なおかつ崩しの局面でも違いを見せられている。「縦に仕掛ける姿勢というか、1対1になった時に、中も縦もどっちも相手の脅威になれるような場面、攻撃する姿勢をもっと出していかないと今後は難しくなる」と課題も認識しながらも、確実に前へ進めているのはポジティブな要素だ。

 ケヴィン・マスカットも頼もしいエースの復活を喜んでいることだろう。フロンターレ戦で2得点を挙げた殊勲者がベンチへ戻ってくる際、わざわざ呼び止めて声をかけた。その時のことを、仲川本人は次のように振り返る。

「(話していたのは)僕の1点目ですね。ウィングがセカンドストライカーというか、ペナルティスポットまで入っていくことで点を取れましたし、それをケヴィン監督も自分にずっと言ってきていたので、『やっぱりあそこにいると(点を)取れるよね』という話は交代の時にされました」

 未来を見据えるならば、ラッキー要素が含まれるゴールよりも左ウィングとして「やっぱりあそこにいると取れるよね」という形を証明できたことに意味がある。地味なゴールかもしれないが、フロンターレ戦の1点目は仲川にとって大きな一歩を踏み出せるゴールだったのではないだろうか。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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