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なぜレアル・マドリードは苦しめられたのか? それでも負けない強さとは【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

レアルはどこか急いでいた?



 攻撃のバランスを崩したレアルは、同時に守備のバランスも崩してしまい、シャフタールの攻撃に対して連動したプレスがなかなかハマらない。43分には、カリム・ベンゼマとエデン・アザールの連係ミスからカウンターを喰らってしまう。

 もちろん攻守のバランスを崩した要因としては、アンチェロッティ監督自身が「チームをフレッシュにするため選手の入れ替えをした」と語ったように、ローテーションを行なったこともあるだろう。前試合のヘタフェ戦では先発したヴィニシウス・ジュニオール、ルカ・モドリッチ、ダヴィド・アラバ、エデル・ミリトンらが、このシャフタール戦ではベンチスタート。代わってアザールやナチョ・フェルナンデスといった、今季あまり出場機会に恵まれない選手たちがスタメンに名を連ねた。

 しかし、それ以上にこのシャフタール戦では、「グループステージを終わらせたい」というメンタリティが、試合全体に影響を及ぼしたのではないか。とにかくレアルの選手たちは「グループステージ」というか、早く得点を奪って目の前の試合を「終わらせたい」という意欲が先行してしまっているようだった。

 そして後半開始直後には、敵の後方からのビルドアップに対して、プレスが全くと言っていいほどハマらず、悠々と自陣右サイドに繋がれてしまう。個々の選手はプレスを掛けてはいるのだが、どこか迫力に欠けるというか、ボールを奪い切ることができない。挙句、クロスを入れられ、オレクサンドル・ズブコフにヘディングでゴールを入れられてしまう。ディフェンスの背後を取るズブコフのポジショニングが良かったところもあるが、その前にいたフェルラン・メンディは競るわけでもなく、少し軽率なディフェンスとなってしまった。

 もちろんビッグクラブが格下相手に思わぬ苦戦を強いられ、先制点を献上してしまうような“事態”は、フットボールでは十分に起こり得る。アンチェロッティ監督も「我々はとてもひどいパフォーマンスだったが、そうしたことがフットボールでは起きる」と振り返っている。そして場合によっては、どれだけ攻めても得点を奪うことができず、どん引きの相手に死ぬ気で守り切られ、0-1のスコアで金星を献上してしまうことも「フットボールでは起きる」。それは、昨季のCL王者であっても例外ではないだろう。

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