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「もう言い訳はできない」南野拓実の4年間。サッカー日本代表、背番号10の飛躍と苦悩【コラム】

酷評され続けてきた背番号10に期待する理由



 そんな停滞感を打破すべく、南野は2022年夏にモナコ移籍を決断。リバプールとの契約は残っていたが、カタールW杯にベストの状態でのぞむためにはコンスタントに試合に出ることが必要だと判断したからだろう。実際、モナコのフィリップ・クレマン監督も彼の才能を高く評価していたが、チーム練習の負荷が想像以上に高く、フィジカルコンディションが上がり切らない時期が続いてしまう。

 今夏赴いた新天地でいきなり結果を出した伊東や堂安、久保、昨季UEFAヨーロッパリーグ(EL)王者に輝いたフランクフルトで得点を取りまくる鎌田に比べると、やはり南野の状況は芳しいとは言えなかった。9月代表シリーズで、主力級がズラリと並んだアメリカ合衆国代表戦ではなく、エクアドル代表戦に起用されるのも、やむを得ないことだったのだ。

 森保ジャパン発足時からエースと位置づけられ、10番を背負ってきた男のスタメン落ちが現実味を帯びる中、本人は周囲の雑音をシャットアウトして、トップフォームを取り戻そうと努力し続けている。

「僕は(メディアの評価とか)そういうのを見ても何も解決しないってのは分かってるんで、自分が成長できると信じてやっていくだけだと思ってます」

 9月にこう強調した南野は約2カ月を経て、ようやく体のキレとゴール前の鋭さを取り戻しつつある。このままいけば、W杯本番はもっといい状態で迎えられるはず。となれば、酷評され続けてきた10番が爆発し、日本の救世主にならないとも限らないのだ。

 冷静に見れば、南野は森保ジャパンで17ゴールとチーム最多得点者。大迫勇也や原口元気といったW杯経験者も皆無で、攻撃陣では最も代表経験豊富なアタッカーなのだ。これまでW杯を逃してきた悔しさも含めて、彼にはカタールに賭ける並々ならぬ思いがあるはず。それを全てピッチにぶつけられれば、ひょっとすればひょっとする。

 4年前の香川真司がそうだったように、下馬評を見事に覆すような華々しい活躍を南野には強く期待したいものである。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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