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サッカー日本代表、ボランチ問題が浮き彫りになったカナダ戦。光った柴崎岳と募る危機感【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子

「メディアのみなさんが煽るでしょう」



 こうした展開だったからこそ、1点を奪って勝ち切りたかった。最低でも引き分けには持ち込みたかった。森保監督もそういった狙いを持って、吉田麻也を投入。3バックにして守備の比重を高めた。にも関わらず、最後の最後に山根視来がPKを献上。それを決められ、まさかの逆転負けを喫してしまった。

 本番前のラストマッチで黒星というのは芳しいことではない。危機感が募って当然だ。

「課題がたくさん出た試合だったので、修正のし甲斐がある。精神的に追い込まれた状態で戦うことが必要かなと思います。メディアのみなさんが煽るでしょうし、どうぞ」とキャプテンは現実を受け止めていた。

 正直言って、プレスのハメ方や攻守の連動性、攻撃の迫力不足などが見られたカナダ代表戦のような戦いをしていたら、ドイツ代表に勝つのは難しい。わずか数日間で厳しい現状を劇的に変化させるのも難しいだろう。

 ただ、最大の懸案だったボランチ問題に関して言うと、柴崎と田中のコンビは連携や連動性の部分で前進し、柴崎が持ち前の展開力や縦の意識を前面に押し出せるようになった。これは27日のコスタリカ代表戦、あるいはドイツ・スペイン戦の途中からのオプションとしては有効ではないか。鎌田が入ってさらに攻撃的に行く形も含め、新たなバリエーションが生まれたことはプラスと見てよさそうだ。

 しかしながら、守備の強度やデュエル、寄せ、ボール奪取力という部分は遠藤と守田が戻ってこないとやはり難しそうだ。特に遠藤がいるかいないかはチームの成否を大きく左右する。その事実が改めて浮き彫りになった。彼には絶対に戻ってきてもらうしかない。

 幸いにして、遠藤はヘディング練習などを再開している様子で、何とか間に合いそうな雲行きだ。その前提なら今回の新オプションもより有効になる。いずれにしても、遠藤の早期回復を願いつつ、カナダ戦の問題点を整理し、少しでも修正を図っていくしかない。それが成功への唯一の道だ。

(取材・文:元川悦子【UAE】)

【了】

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