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「俺だったら…」。ベンチで2得点を見たサッカー日本代表FW「あれが狙いでした」【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by JMPA, getty images

サッカー日本代表の想定と共通認識



 PKから失点した後も日本代表は全くと言っていいほど攻撃チャンスを作れない。鎌田が「前半は本当にひどくて、個人的に初めてのW杯をあのままの形で終われば、間違いなく過去最悪の試合だったし、一生後悔するような内容だった思う」と自ら酷評していたほどの圧倒的劣勢が続いたのだ。

 こうした中、前田の見せ場らしい見せ場は、終了間際に長友佑都の左クロスにバックヘッドで反応したシュートシーンだけ。結局、彼は57分でベンチに下がり、攻撃的な戦いを見せた試合終盤をベンチで見守ることになった。

「前半、相手にボールを持たれるのは想定内だったし、失点1で抑えていこうと共通意識を持ってプレーした。我慢するところはしていたし、それが大きかったと思います」と前田は気丈に前を向こうとした。

 確かに、本人にしてみれば、W杯初戦のスタメンに抜擢されたこと自体、想定をはるかに上回ることだったのかもしれない。思い返せば、2018年9月に森保ジャパンが発足した頃、前田は当時J2の松本山雅でプレーする若手でしかなかった。しかも、アジア競技大会で負傷し、長期離脱を強いられていた。東京五輪に残れるかどうかも微妙な情勢で、「当時はカタールW杯に出るなんて想像もしていなかった」と本音を吐露する。

 流れが微妙に変わり始めたのが2019年だ。コパ・アメリカ(南米選手権)のメンバーに選ばれ、大舞台に参戦したが、ゴールを決め切ることができず、世界との実力差を痛感。「このままだったら五輪に出られたとしても活躍することはできない」と悟り、ポルトガル1部のマリティモ移籍を決断したのだ。

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