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権田修一、川島永嗣、シュミット・ダニエル。サッカー日本代表「端っこの3人」が支えた大躍進

text by 編集部 photo by Getty Images

GKのいい関係性




「GKって少し特殊で、僕らは端っこで3人で練習しているような関係性なので、『今日はちょっと元気ないな』とか、『今日すごくいいな』とかもわかる。自分がいいプレーした後も、よくなかった後でも、常に全員で(共有する)関係を築いているのがGKなんです。だから嬉しい時は一緒になって喜ぶし、悔しい時は一緒に悔しがるのがGKのいい関係性。

僕もいろいろなチームでやっていますけど、それがちゃんとできているチームは競争も健全だし、関係性もいい。逆にそれができていない時は必然的にチーム全体の士気にも関わる。そういう意味では今の僕と(川島)永嗣さんとダンの3人の関係性は間違いなく、自信を持って『いい』と言えます」(権田)

 ドイツ代表戦やスペイン代表戦で、真っ先に喜びを分かち合ったのは彼らにとって自然なことだった。スーパーセーブの快感も、ミスによる苦しみも全て共有してきたからこそ、最後は一緒になって笑い合えるのである。

 今大会は権田にとって正守護神を任された初めてのワールドカップになっている。ドイツ代表戦では自らのファウルで相手にPKを献上した後、4連続スーパーセーブで試合の流れを日本代表に引き寄せて、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。

 しかし、続くコスタリカ代表戦の失点場面では、触りながらシュートを止められなかったことが「ミスなのではないか」と批判も浴びた。本人にも「あのシュートは準備の段階でしっかりポジション修正ができていたら止められた」という感触があった。

 世界的強豪相手に劇的な逆転勝利を収めた直後の試合でまさかの敗戦となり、権田に対する非難や批判の声はこれまでになく苛烈なものに。「点を取られたら批判されるし、取られなかったら称賛される」ポジションだけに「自分のミスで失点して批判を浴びるのは当然。手のひらが表になったり裏になったりを、サッカー人生を通じてずっと繰り返しているような感覚がある」と語った守護神と同じ思いを共有していたのは、他でもない川島だった。

「どういう形であれ、失点すれば最後にGKが責任を取らなければいけない。そういうポジションだと思うし、それはこれからも変わらないと思います。日々ののトレーニングの中でそういう(失点をする)可能性を減らすための作業をするしかないし、続けていくことは僕たちGKの宿命だと思います。

最後を止めるのが自分たちの仕事ですし、その気持ちはみんな変わらないと思う。だから結果に対して、僕たちGKは常に覚悟を持って臨んでいかなければいけない。辛いというか、それがGKというポジション。そういう世界で生きているんです」(川島)

 権田がピッチ上で輝けるのは、川島やシュミットからのサポートや刺激があるから。日本代表の背番号12は、彼らの存在が自らのパフォーマンスを引き上げてくれていると信じている。2014年のブラジルワールドカップで川島の控えとしてベンチに座っていた経験も、カタールの地で躍動するまでの成長の糧になった。

「(川口)能活さんとナラさん(楢崎正剛)みたいに、僕が若い時に永嗣さんにとってのライバルになれなかったのが、日本のGKのレベルを上げられなかった要因の1つだと思っているんです。(2人とも)練習から素晴らしいパフォーマンスなので、少しでも気を抜いたらダメだし、逆に万が一けがをしたりしても、任せられるような安心感をみんなが持っている。永嗣さんやダンのおかげで、お互いライバル関係でありながらも、いい関係を築きながら過ごせているのかなと思います」(権田)

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