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オランダ代表が直面した「ポジショナルプレーの壁」。アルゼンチン代表との差は?【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 西部謙司 photo by Getty Images

両者の差は…



 ポジショナルプレーの壁に突き当たったチームがもれなく抱く感想(=メッシがいない)の本人がアルゼンチン代表にはいる。相手にボールを支配され、自分たちが保持したときもさほどスムーズさも威力もなかったが、少なくとも「武器」はあった。

 35分、リオネル・メッシはいつもの右ハーフスペースからのカットインを開始。面前に3人のオランダ人、その向こうにも3人が網を張って待ち構えていた。

 前方にいたのはフリアン・アルバレスとナウエル・モリーナ。いつもどおり、いつパスを出すのかわからない持ち方のままメッシはドリブルを続け、いきなりDF3人の隙間に針の穴を通すようなラストパスをモリーナへ送っている。モリーナが抜け出してゴール。

 おそらくメッシがドリブルしながら見ていたのはフィルジル・ファン・ダイクだろう。リーチできる距離と対人能力が異常なほど強力なCBが動くまで待っていた。ファン・ダイクがアルバレスの方へ一歩移動した瞬間にパスを出している。蹴った瞬間は、アルバレスへ出したように見えた。しかしメッシの狙いはそこではなく、アルバレスの方へ動いたファン・ダイクの背中側だ。右へ動いているファン・ダイクは自分の左を守れない。いかに超人的DFでも、そこはやはり人間なのだ。

 ポゼッションに関してはオランダ代表のほうが上回っていたが、彼らには「メッシ」がおらず、アルゼンチン代表にはメッシがいた。その差がそのまま表れたわけだ。

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