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ポルトガル代表を悩ませた“細身のジダン”。モロッコ代表の合理的な戦い方とは?【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 西部謙司 photo by Getty Images

ポルトガル代表を悩ませた“細身のジダン”



 アフリカ北西部のマグレブ(西方の意味)は技巧派の産地としてフランスではよく知られていた。1958年ワールドカップで大会記録の13ゴールを叩き込んだジュスト・フォンテーヌ(フランス代表)はモロッコの出身だ。俊足でテクニックも素晴らしく、シュート技術は圧巻だった。3位になったフランス代表は優勝したブラジル代表を超える得点を決めていたが、「戦術フォンテーヌ」といえるほどの存在感だった。

 フランスリーグには数々のマグレブの名選手がいたが、最も有名なのはジネディーヌ・ジダンだろう。両親がアルジェリア出身であるジダンのわけのわからないテクニックはマグレブのイメージそのものだった。

 今回のモロッコ代表にも“細身のジダン”みたいな選手がいる。ボールタッチと身のこなしの柔らかさは欧州の選手にはあまり見られないものだ。欧州の技巧派代表であるポルトガルの選手と比べてもひと味違う。

 かつてカサブランカで出会った合気道の先生いわく「モロッコ人は体の使い方が上手い」のだそうだ。アゼディン・ウナヒやソフィアン・ブファル、ハキム・ツィエクの軽やかな身のこなしはブラジル代表のネイマールを思わせるものがあった。

 捕まえたと思ったらスルリと抜け出される。ポルトガル代表はモロッコ人たちのすり抜けに悩まされ続けた。

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