フットボールチャンネル

意表を突いたアルゼンチン代表の策略とは? フランス代表を苦しめた方法【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 西部謙司 photo by Getty Images

総攻撃で追いつくフランス代表



 何もかも上手くいかないフランス代表は、前半41分にデンベレとオリビエ・ジルーを交代させ、マルクス・テュラムとランダル・コロムアニを送り込むが状況は変わらず。後半もアルゼンチン代表の球際の強さ、メッシとディ・マリアを中心とした攻め込みに苦戦した。71分にはついにチームの心臓であるアントワーヌ・グリーズマンを諦めてキングスレイ・コマンに交代。さらに左SBテオ・エルナンデスをエドゥアルド・カマビンガに代えた。

 これで4-2-4に近いシステムとなり、さらにMFのカマビンガをSBに置いたことで総攻撃の決意を固める。アルゼンチン代表が守備固めに入ったこともあるが、追撃の1点目は唐突の感があった。コロムアニの強引な突破にニコラス・オタメンディがファウルしてPK。キリアン・エンバペが決めて1点差に。

 ただ、1分後に同点弾が決まったことで状況は一変する。コマンがメッシから奪ってアドリアン・ラビオにつなぎ、ラビオの斜めのクロスをエンバペが頭でテュラムに落として裏へ抜ける。リターンを見事なボレーで打ち抜いた。起死回生のゴールで2-2、これで俄然勢いがついた。ここからロスタイムを入れての17分間は怒涛の攻勢をかけている。

 パスワークできれいに崩すわけではなく、疲れの出てきた相手をパワーで押し切りゴールに迫っていく。コマン、コロムアニ、エンバペ、テュラムのアタックラインは有無をいわせぬパワーに溢れ、もう戦術うんぬんではない時間帯にうってつけの4人でもあった。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top