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「個にフォーカスして対応する」森保一監督が考える最低限すべきこと【非カリスマ型監督論(1)】

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FIFAワールドカップカタール2022で、サッカー日本代表は決勝トーナメント進出という結果を残した。日本代表を率いる森保一監督は指導哲学を持っているのか。サンフレッチェ広島の指揮官を務めていた当時の著書、『プロサッカー監督の仕事 非カリスマ型マネジメントの極意』を一部抜粋して全3回に渡って公開する。(文:森保一)


プロサッカー監督が最低限すべきこと


【写真:Getty Images】

 チームの中にはそれぞれ違う感性やキャラクターを持った選手がいて、それぞれが置かれた状況も千差万別です。もちろんチーム全体としての方向付けは必要ですが、しっかりと個にフォーカスして、対応してあげることが大切だと考えています。

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 そのために僕が選手にしてあげられること、してあげないといけないことは、何よりもまず「観ること」だと思っています。

 自分が何か働きかけて変えてあげるというよりも、とにかく単純にプレーを観てあげる。そこから評価や指導につながっていくわけですが、まずは観てあげないことには、選手に何も言ってあげられません。

 チームに在籍する全選手を「観る」ことは、実はそれほど簡単ではありません。プロチームという環境では、試合に絡めている「主力組」と、絡めていない「サブ組」の選手とにどうしても分かれてきてしまいます。それでも、時間が許す限りは極力全員を観る。それは僕にできる最低限のことであり、一番やらなければいけないことだと思っています。

 自分の目が間違っていて、使ってあげられる選手とそうでない選手のチョイスを間違えてしまう可能性はゼロとは言えません。ただ、全員をちゃんと観てもいないのに、使う選手と使わない選手に分けることは絶対に間違っている。だから「使う選手」だけを観ることにはならないように気をつけています。

 僕は昔から、「人を観る」ことが好きです。いわゆるピープルウォッチングというやつです。たとえば街にいても、歩いている人が何を考えているんだろう、この人はハッピーなことがあったのだろうか、ちょっと猫背気味だから嫌なことがあったのかな、などと考えるのが好きなのです。いいことなのか悪いことなのかもわかりませんが、「人の心を読み取りたい」と思うのです。

 人間関係に軋轢が生まれないようにと気遣って人を観ている部分もあるにはあります。誰だって他人と喧嘩はしたくないし、相手が喜ぶことをしてあげたいという気持ちはありますよね。ただ、僕が人を観るのが好きなのは、純粋に興味の部分が大きいのだと思います。

 よく、選手名鑑やサッカー雑誌で、選手や監督へのアンケートがあります。そこに「もし監督じゃなかったら何になりたかった?」という類の質問があると、僕は「心理カウンセラー」と書いています。どうやってなるのか、何を勉強すればいいのかも知らないのですが、それくらい「人の心」に興味があるのです。

<書籍概要>

『プロサッカー監督の仕事』

著者:森保一
定価:1,760円(本体1,600円+税)

現役監督が明かす現場のリアルと指導哲学。
脱トップダウンの指導法が芯の強いチームを作る!

■J1リーグ連覇を達成した指揮官が日々考え、取り組んでいること

2012年、2013年とサンフレッチェ広島をJ1リーグ連覇に導いた森保一監督。
育成型クラブとして着実に成長を続ける広島で指揮官はどういった考えで指導を行っているのか?

シーズンを通したチーム作りからコーチや選手との関係、試合に向けての準備や采配など、
本書ではプロサッカー監督として日々、現場で情熱を注ぐ現役監督のチームマネジメントと指導哲学を実例まじえながらその極意を丹念に綴っています。トップダウン型ではないその指導法は時代の潮流にも合い、サッカーの指導者のみならず、ビジネスマンにとっても興味を持っていただける内容になっています。

書籍の詳細はこちら

【了】

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