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日本代表 1年前

初招集・中村敬斗。「走れないし、戦えない」若者がサッカー日本代表に這い上がるまで【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

運命を変えた「ゼロからの出直し」



 そのギラギラ感と上昇志向の強さは、かつての本田圭佑を彷彿させるものがあった。奇しくも当時の彼の本拠地・エンスヘーデのグロールシュ・フェステ・シュタディオンは、2019年9月の日本代表対オランダ代表戦で本田が中村俊輔に「FKを蹴らせてくれ」と直訴した場所。その話を振ると、中村敬斗は「分かんないや」と苦笑しつつ、「自分はこれまでの人生で確立された場所に一度もいたことのない選手。自然とこういう強気の性格になりますね」と偉大な先人との共通点を認めていた。そういう意味でも大器の片鱗はあったのだ。

 しかしながら、その後のキャリアは一筋縄ではいかなかった。同シーズン後半戦は出番が激減。新型コロナウイルスの影響もあり、契約期間を1年残して退団し、2020年夏にベルギー1部・シントトロイデンへ赴いた。が、そこでも思うように試合に出られなかったため、わずか半年後の2021年2月にはオーストリア2部・FCジュニアーズへのレンタル移籍を決断する。

「2017年のU-17W杯と2019年のU-20W杯に出ている中村敬斗がオーストリア2部?」と日本サッカー関係者の多くが驚きを持って受け止めただろうが、本人の中では「ゼロから出直す」という強い覚悟があったはず。半年間で9試合2ゴールをマークし、翌21/22シーズン序盤5試合で3ゴールと結果を残したことで、同国1部・LASKリンツへの完全移籍を勝ち取ることに成功した。

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