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「パス1つに意味を持たせる」サッカー日本代表が共有したコンセプト。スペイン人指導者が見た久保建英の魅力とは

シリーズ:フットボール批評オンライン text by 川原宏樹 photo by Getty Images

フットボール批評オンライン 短期連載(3)

 サッカー日本代表は、ドイツ代表とトルコ代表からともに4得点を挙げて勝利を収めている。スペイン人指導者アレックス・ラレアは、日本代表の攻撃をどう分析するのか。また、来年に控えるAFCアジアカップのキープレーヤーを挙げつつ、注目すべきポイントにも言及している。(取材・文:川原宏樹)


【プロフィール】アレックス・ラレア

プロ選手としてカナダでプレーした後、指導者の道に進み、欧州最高位の指導者ライセンスUEFA PROを取得する。2020年からは元スペイン代表、元ヴィッセル神戸のダビド・ビジャが主宰するサッカースクール『DV7サッカーアカデミー』日本支部のディレクター・コーチを務める。

ダビド・ビジャとアレックス・ラレア
【写真:川原宏樹】

「そのパス1つにどういう意味を持たせるのか」

サッカー日本代表MF遠藤航
【写真:Getty Images】

 ドイツ代表とトルコ代表に勝利した日本代表の成長は、チームとしての意図を共有して理解が深まっていることが契機になっている。『DV7サッカーアカデミー』で日本の子どもたちを指導するスペイン出身のアレックス・ラレアはそう指摘する。

 前回は守備面についての解説だったが、今回は攻撃について説いている。その攻撃面においても、共有と理解が進んでいるプレーが見られたと分析した。

 日本代表はどういったプレーで真価を発揮したのだろうか――。

 日本代表はドイツ代表戦においても、トルコ代表戦においても多くの決定機をつくり出し、両試合とも4得点を挙げて勝利した。その得点方法も、ワールドカップのときのようにスピードに頼ったカウンター攻撃だけでなく、右から左からと厚みのある攻撃を見せていた。

 そのように攻撃を展開できていた要因にも、チームとしての意図を共有できていて、どうゲームを進めるべきかの理解が深まった結果だとアレックスは分析している。

「プレーする選手たちが、どのように相手ゴールにボールを前進させるかを理解して、それがしっかりと共有されているように感じました。ただパスをするのではなく、そのパス1つにどういう意味を持たせるのか、またどういう意味を持つのかを考えながらプレーできていました」

「たとえば、逆サイドから攻めたほうがいいのかとか、相手のマークが緩くなった内側への縦パスで前進させるのかとか、そういった瞬間、瞬間で状況をしっかりと理解してプレーの判断ができていて、それが的確かつ迅速なためクオリティが向上しています。ですから、見ていても日本の攻撃は滞りなく進んでいるように感じたことでしょう」

 そのうえで相手との優位性までをインプットして、攻撃を展開できていたと捉えている。

「遠藤航や守田英正などゲームを組み立てるボランチのポジショニングも、高いクオリティを見せていました。そこからどのようにボールを動かして、どのストロングポイントを使って攻めるのかという点で、選手たちは同じ絵を描けているのではないでしょうか。それが多様性をもってできているということが成長の証だと思います」

 この攻撃面における成長も、契機や根源は同じだと主張する。

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