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「長野から出ていけ」Jリーグ最年少監督に届いた誹謗中傷。「ブレーキが効かなくなっていました」

シリーズ:フットボール批評オンライン text by 木崎伸也 photo by Getty Images

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J3優勝という目標に向けて快調に上位を走っていたAC長野パルセイロだったが、大きく失速してしまい、8月下旬にはシュタルフ悠紀監督の解任が発表された。低迷の最中には誹謗中傷ともとれるコメントが寄せられ、偏った報道とともにチームはバランスを崩していた。(取材・文:木崎伸也)

AC長野パルセイロの選手たち
「スタジアムに来て応援してくれる人たちの純粋な気持ちは、本当に素晴らしいと思いました」【写真:Getty Images】


AC長野パルセイロはなぜ低迷から抜け出せなかったのか?

――シュタルフ監督のところにも誹謗中傷が来たのでしょうか。

「すごかったですね。インスタグラムをやっているのですが、ダイレクトメッセージがたくさん届きました。サッカー熱が高くクラブに対する期待値が大きい反面、誹謗中傷も多く、去年もクラブが声明を複数回出したくらいです。

 沼津に負けたときは、『長野から出ていけ』、『史上最弱のパルセイロだ』といった声が届きました。あとは誰を使え、誰を使うなという意見ですね。選手本人にも『おまえが出るから負けるんだ』という声が届いていた。どんなメンタルが強い選手でも、感情が揺さぶられる。影響は大きかったです。

 一部のメディアの担当者にもずいぶん頭を悩まされました。沼津戦は想定以上にラインが下がってしまったとはいえ、ラインを下げて戦うのが狙いだった。でも記事でそこをボコボコに叩かれ、次のFC大阪戦では相手がロングボールを使うのでDFラインを上げるのは逆効果なのに、中には記者の影響を受けてラインを調整する選手もいた。

 また、FC大阪戦では花園ラグビー場のグラウンドが悪いので蹴る選択をしたら、ビルドアップが機能しないと批判された。そうしたら次の琉球戦で、選手たちが見返そうとして普段だったら蹴るような場面でもつなごうとする姿勢が見られた。結局、ビルドアップのエラーからPKを献上し同点弾を決められてしまいました。

 ついには『戦っているように見えない』という声があがり、その次の鹿児島戦では選手たちがフルスロットルのハイプレスをかけた。立ち上がりだけ前から行こうと言っていたはずなのに、ブレーキが効かなくなっていました。

 自分たちの方針をブレずにやる芯の強さとそれをスタッフ全体でサポートする姿勢が足りなかったといえばそれまでなんですが、メディアの人たちにはインタビューや記事が選手の心理に影響することをもっと自覚して欲しいです」

――メディアの報道やSNSの反応で少しずつ細部がズレ始め、試合ごとにそれが大きくなっていったわけですね。

「主力の離脱と、メンタルの揺さぶりと、新しいことにチャレンジしている中で心の奥底にある不安な気持ちが引っ張り出されたことが合わさり、さらになぜ誰々が使われないんだといった偏った報道で一体感にもひびが入り、そこからはもういよいよ本当に勝てなくなってしまいました」

【この記事はインタビューを一部抜粋したものです。記事全文では序盤の躍進につながった「賢守」のメカニズムや、パルセイロサポーターへの感謝、指揮を執った1年9か月の反省と後悔などについて、シュタルフ悠紀元監督が本音を明かしています】

【了】

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