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日本代表 7か月前

マンUを断った鈴木彩艶の夢。サッカー日本代表で感じた悔しさと反省「まだ劣っている」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by NN

「もちろんマンチェスター・ユナイテッドに行きたかった」


「今回の決断はサッカー選手としても、一人の人としても本当に迷いました。何も考えなければもちろんマンチェスター・ユナイテッドに行きたかったですが、その先にどういう未来が待っているのかを時間をかけて考えた結果、一歩一歩、確実にステップアップしていくことが大事だと判断しました。いまの自分はより高いレベルで、とにかく試合に出ることが重要です。そこで活躍することで、他のクラブの目にも留まる。自分の夢を考えたときに、ベルギーでプレーしようと決めました」

 マンチェスター・ユナイテッドが今夏の移籍市場で、カメルーン代表の守護神を務めていたアンドレ・オナナを5年契約で獲得していた補強も、彩艶の背中を押す要因になった。

「マンチェスター・ユナイテッドで試合に出られるレベルにあるのかどうかを考えたときに、日本で試合に出られていない自分ではなかなか難しいと思いました。ただ、現時点で行けなくても、数年後には必ず行きたいと考えているので、着実にステップアップするために今回の移籍を決断しました」

 彩艶の言葉を聞いて思い出したのが「急がば回れ」という言葉だ。現時点ではオナナの牙城を崩す存在にはなれない。現実を冷静に見極めた上で、小学生年代から所属してきた浦和を離れる決断を下した。

 もちろん、新天地シントトロイデンですぐに試合に出られるとは思っていなかった。守護神を務めるシュミットを含めて、彩艶は「レベルの高い競争はどこにでもある」と自らに言い聞かせて海を渡った。

 そのシュミットは今夏のステップアップを考えていた。実際にかつて川島永嗣が所属した仏リーグアンのメスとの交渉が合意に達し、メディカルチェックも受けた。しかし、移籍期限最終日の9月1日になってまさかの破談となり、シュミットはいまもシントトロイデンに所属している。

 しかし、シントトロイデン側もシュミットの移籍に備えてゴールキーパー陣を再編成した。神戸の元指揮官で、今シーズンからシントトロイデンを率いるトルステン・フィンク監督がその稀有な潜在能力に大きな期待をかけるなかで、彩艶は8月下旬から6戦連続でゴールマウスを守り続けている。

 対照的にシュミットは、リザーブとしてベンチにすら入れない状況が続いている。トルコ戦で負った怪我が癒えない中村だけでなく、シュミットも今シリーズで外れた理由がおそらくここにある。

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