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Jリーグ 2か月前

アルビレックス新潟に宮本英治が必要な理由。相手を苦しめる「ボディーブロー」の価値、JFL→J1で得た知識と身体【コラム】

シリーズ:コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

通らなかった9本のパスには意味がある



「スルーパスが通らなくても(自分が)狙うことによって、相手も狙われるのを恐れてラインを下げたり、(スルーパスを)蹴らせないように出てくる。そのパスが通る、通らないは別として、やっぱり守り方は難しくなるので、そこを見ているよ、狙っているよと(相手に)分からせることは大事なのかなと思って自分は意識していた」

 通らなかった9本のパスには意味があり、90分という試合時間の中で、宮本のパスはボディーブローのような形でじわじわとヴェルディを苦しめていた。もう1人のボランチ、秋山裕紀は94%(114/121本)のパス成功率を記録。どちらかというと秋山が確実性のあるパスを配球してリズムを作り、宮本が攻撃のスイッチになるようなパスを意識していたようだ。

「裕紀とのバランスもあって、彼が低いポジションを取ったら自分は高いところに出たり。相手がブロックを組んでいたので、相手を引き出しながら空いたスペースに飛び出したり、抜け出すシーンはいつもより多かったかもしれない」

 繰り返しになるが、だからこそ数字で評価するのは難しい。攻撃的なスタイルを貫く新潟において、攻撃のスイッチになりつつ、ネガティブトランジションではデュエルの強さを発揮できる宮本は、新潟に不可欠な存在になっている。J1初挑戦ながら、試合の流れを読みながら判断を下していくのは簡単なことではないが、宮本はそれを飄々とこなしていた。

「自分が今までやってきたことには自信を持ってJ1という舞台にチャレンジできている。そこは堂々とプレーしたいですし、J1で勝ち取ってゲームに出ているのでやらなければいけない責任もありますし、堂々と自分のできるプレーを示さなければいけない」

 25歳の宮本がJ1にたどり着くまでの道のりは決して近道ではなかった。JFAアカデミー福島から国士舘大学を経て、いわきFCに加入している。いわきFCは当時JFLに所属していた。同年代の選手たちの活躍や苦悩を身近で見てきた中で、異なる選択をした宮本は着実に力をつけていた。

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