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日本代表 2か月前

U-23日本代表、田中聡は“湘南スタイル”で世界へ。挫折と努力の先の念願ゴール。生き残りへ「失うものはない」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by NN

「ここで満足したらもう先はない」



「今年は攻撃面で何らかの違いを見せたかったし、攻撃は自分の短所でもあったのでそこを補えれば、という思いはありました。そのなかで、今日はそれほど違和感なくプレーできた。ただ、試合そのものもかなりオープンな展開になっていたし、このチームでスタートから出てどれだけできるか、というのは自分でも未知の部分なので。そこはまだ満足できないし、ここで満足したらもう先はないと思っています」

 今シーズンのJ1リーグで、田中はダブルボランチの一角及びアンカーとして全4試合で先発フル出場。データ会社『Opta』の日本語版公式Xは25日に田中のタックル数17、インターセプト数12はともに今シーズンのJ1全体で最多と投稿し、そのプレースタイルを「献身」と称賛している。

 ストロングポイントは、U-23代表でもいかんなく発揮される。ウクライナ戦で田中が投入された67分を境に生じたピッチ上の変化を、インサイドハーフを組んだ松木はこう語っている。

「ボールを狩る特徴の部分を含めて、聡くんは自分とすごく似ていますし、その上で追加点が欲しい場面ですごいゴールを決めてくれた。とても頼もしい存在だったと思っています」

 守備面だけではない。3月2日の京都戦では、2021年9月26日の川崎フロンターレ戦以来、公式戦で実に888日ぶりとなるゴールをマーク。湘南の今シーズン初勝利に貢献すれば、4-4で引き分けた同17日の浦和レッズ戦では、アンカーでプレーしながら味方の3ゴールに絡む活躍を演じてみせた。

 浦和戦後にモードを湘南から代表に切り替えた田中は、こんな言葉を残している。

「うまい選手はたくさんいると思うけど、自分はボールを奪うところや闘うところが武器なので。久しぶりの代表ではそういった自分の特徴を出して、何らかの爪痕を残してきたい」

 2022年8月にベルギー1部リーグのコルトレイクへ期限付き移籍した。念願の海外移籍に胸を躍らせたが爪痕を残せず、完全移籍へのオプションも行使されなかった。新たな移籍先も見つからなかった田中は、シーズン終了後の昨年6月に湘南へ復帰。クラブを介して発表されたコメントが共感を呼んだ。

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