「勇気を与えられる」存在へ。年齢もカテゴリーも関係ない
「ケネ(三國)が飛んだ瞬間に、自分のなかで『これは入る』と思いました」
2−1で迎えた76分には左サイドで得た自らのスローインから、MF菊地泰智のリターンを受けて再び左足を一閃。山岸の追加点をアシストした徳本は、左足を警戒されても動じないと明かしている。
「たとえ対策を練られても問題ないですね。ゴール前にはこぼれ球にめちゃくちゃ強い(稲垣)祥くんがいる。僕が自信をもって蹴れば相手の難しいクリアにつながって祥くんが、という展開もあるので」
J3のFC琉球からJ2のファジアーノ岡山、J1のFC東京とステップアップ。今夏に移った名古屋で、元日本代表のMF山中亮輔と左WBのポジションだけでなく、長谷川監督の薫陶を受けながらセットプレーのキッカーも争い、自身初のタイトル獲得を視界にとらえた状況に徳元は目を輝かせる。
「下のカテゴリーからはい上がってきた身として、J3やJ2の選手に勇気を与えられる。年齢は関係ないと自分のプレーを通して伝えられる、このチャンスを絶対に逃したくない、と思って今日は戦いましたけど、まだ前半が終わっただけなので、力強い仲間がいるホームで次もしっかり戦いたい。
僕自身はまだまだ波があるし、今日がたまたまだと言われないように。これを続ければ、いい左足をもっていると言われるはずなので」
初体験の1試合3アシストも通過点。舞台を豊田スタジアムに移す13日の第2戦へ。勝ち抜いた先の11月2日に国立競技場で待つ決勝での戴冠へ。
ホームの試合前には「神様がいるので。験担ぎですね」と自宅のトイレ掃除を欠かさない苦労人は、琉球時代から憧れ続けた前チームメイトで、誕生日も同じ9月12日の長友佑都にあやかり、名古屋であえて背負った「55番」をさらに輝かせるための努力を積み重ねていく。
(取材・文:藤江直人)