ギリギリの判断「いいプレーだとは…」
小泉佳穂を起点に、鮮やかなカウンターを仕掛けてきた柏に対して、平川もスプリントで戻りながらの守備を強いられた。
しかし、快速を飛ばして前に飛び出す小屋松知哉が、渡井理己からの縦パスを受ける直前に平川が追いかけるのをやめてステイ。小屋松はフリーで抜けてそのままゴールネットを揺らしたが、判定はオフサイドとなった。
本来ならば付いていくのがセオリーで、かなりギリギリの判断だったことは間違いない。平川も「いいプレーだとは思ってないです。リスクもありますし、結果オーライかな」と認めながらも、相手のスピードも考えた駆け引きでの決断だったことを明かした。
「90分戦えて、最低限ですけど、ゼロに抑えることができたというのは自分にとって自信になりますし、次につながるような試合ができたと思います」
平川は久保建英や中村敬斗とともに、2017年のU-17W杯を戦った選手だ。そんな才能が、FC東京、鹿児島ユナイテッドFC、松本山雅FC、ロアッソ熊本、磐田、そしてヴェルディと渡り歩く中で、何度も壁に当たりながら、ここへきて成果をあげ始めている。
「やっぱり色々ありながら、自分がこの強度で戦えてると思いますし、そういう経験があるからこそ、今できてる部分が多いと思います」
守備のハードなタスクをこなすことはヴェルディの基準になっている一方で、違いは攻撃面で出てくる。その点に関して聞くと、平川は「本当にその通りだと思いますし、それが自分に求められていると思うので。試合ごとにどんどん良くなっていくと思いますし、守備の基準を常に超えながら、攻撃のボールワークのところで違いを出していきたい」と答えてくれた。
日本代表がFIFAワールドカップ2026(W杯)出場を決めて、ここから1年余りで本大会を迎える。今年7月には国内組だけでの参加が見込まれるE-1選手権というチャンスがある。
「もちろんチャンスがあるなら目指していますけど、まだまだ足りない部分も多いと思いますし、まずはこのチームで中心となって戦うことが全てだと考えています。そこにフォーカスしたい」
ボランチというポジションで、ようやくスタメンのチャンスを得て、監督の期待に応えた形だが、その上で攻撃のスペシャリティを遺憾なく発揮して、チームを勝たせる選手になれるか。そこから、しかるべき道が開かれていくはずだ。
(取材・文:河治良幸)
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