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Jリーグ 8か月前

「お前は今、始まったんだ」川崎フロンターレの大先輩が涙する土屋櫂大に声をかけた。残酷なデビュー戦のエピローグ【コラム】

シリーズ:コラム text by 菊地正典 photo by Getty Images

「櫂大はもっている」「チームにとっても有意義なこと」

「すごくしょげていたから。自分が入ってから2点取られたのは悔しいんだろうけど、後ろのポジションってそういうところだから」

 安藤にも同じような経験がある。

 湘南ベルマーレに期限付き移籍した2013年。ホームでのジュビロ磐田戦だった。アレックス・サンターナの退場によって出場機会が巡ってきたが、そのファーストプレーで駒野友一にFKを決められた。

 共通点はそれだけではない。

「僕もその試合、負けなかったんですよ。チームが追いついてくれた」

 今回のマリノス戦は負けていてもおかしくはなかった。2-1でリードしていたのだから、勝つチャンスはあった。ただ、90+2分に逆転を許せば、ほとんどのチームは負ける。

「それが勝ち点0じゃなく1になったのはチームの力だと思うし、櫂大はもっているんじゃないですかね。下を向くようなことではない。まだまだ勉強しなきゃいけないけど、それがわかったことも含めて、プロサッカー選手としてのいい出だしですよ」

 確かに、たとえば2点差以上リードしている終了間際にピッチに入り、特筆すべきことがないままデビュー戦を終えるよりは、反省点だとしても強烈な出来事がある方がむしろ、今後の成長に好影響があるかもしれない。

「これで櫂大も『俺がやらなきゃ』という気持ちになるなら、チームにとっても有意義なことだと思う」

 センターバックとして1点リードの状況でピッチに入り、2失点を許したのだから、厳しい評価を下されても仕方がない。土屋自身もそれを受け入れている。

 だが、大事なのはその後だった。逆転を許した後の振る舞いからは、土屋の強さが感じられた。
 

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