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Jリーグ 8か月前

「やりますよ」宇野禅斗の一言から始まった清水エスパルスの逆転劇。21歳の勇気ある行動が苦しむチームを救った【コラム】

シリーズ:コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

「自分にもっと厳しく」誰かの穴を埋めるのではなく…

「まず距離感が良くなった。距離感が良くなったからこそ、攻守においての切り替えの早さだったり、自分たちの時間をより多く作ることができたかなと思います」

 読みを利かせたインターセプトや対人の強さだけではない。ただ、積極性を見せた攻撃参加について尋ねると、少し照れた表情でこう言った。

「まだまだダメですね。あれで攣ってるようじゃ。自分にもっと厳しく準備しないといけないと思います。でも、感触的には攻撃参加もいっぱいできましたし、もっともっとクオリティを上げていけばいいかなと」

 秋葉監督は、そんな宇野の献身性に目を細める。

「こういう(宇野のような)選手はどのポジションをやっても生き生きと力を発揮するのだなと思ったし、こういうときに進んでやってくれる彼のメンタリティ、能力の高さ、センスみたいなものは非常に頼りになる」

 まだ21歳。試合後の取材エリアでは時折、年相応の表情が垣間見えたが、試合全体を振り返るときの表情はチームの主力を担う頼もしさを感じさせる。

 奇しくも、監督会見場と取材エリアのそれぞれで、秋葉監督と宇野が残した言葉からは共通点を見出すことができる。

「やっぱ0-2からひっくり返すことができたのは、前半の選手たちが耐えてくれたからこそだと思います。どのメンバーが出ても、ハイクオリティでやらないといけないっていうところはチーム全体で求めていかないといけない。後半入ってきた選手のパワーもありましたけど、(勝てて)本当によかったなと思います」(宇野)

「選手たちが最後の最後までファイトしたからこそ、このようなエンターテインメント性が高く、非常に面白く、エキサイティングで心や魂を震わせるようなゲームで勝ってくれた。スタートで出た選手も含めて全員で掴んだ勝利だと思っている」(秋葉)

 決して潤沢とは言えない選手層のチームで、誰かの穴を埋めるのではなく、チームに力を与える存在になる。宇野禅斗がこの試合で示したのは、ただのユーティリティ性ではなく、頼られる選手としての心構えだった。

(取材・文:加藤健一)

 
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