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Jリーグ 1週間前

脇阪泰斗はまるで仙人。川崎フロンターレの攻撃はレバークーゼンの香りがする。+1が鍵を握る構造【戦術分析コラム(2)】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

「問題があるとすれば…」川崎フロンターレが優勝争いに加わるために

 立ち位置のルールに則りながら、ゴール前、ライン間、トップ下のポジションにとらわれることなく動き回る脇坂はボール保持のサポートとゴール前の崩しで貢献をしている。身振り手振りによる指示でボールの循環と味方へ立ち位置を動かすことも多い。もちろん、ボールを持ったときの技術の高さも健在で、試合の構造を維持するうえでは欠かせない存在になってきている。

 そして、山本も本領発揮となってきている。ガンバではひとりでチームを動かしていた孤軍奮闘から、川崎にきて苦労の日々が続いているようだった。最近ではボールを持ったときの振る舞いで橘田や河原に差を見せつけるプレーの連続となっている。あまりに目立ちすぎたためか、ガンバ戦では後半からボールの奪いどころとして狙われるほどであった。
 
 川崎の立ち位置の整理は、おそらく相手の立ち位置がキーになっている。自分たちをなんとなく5レーンに並べてから調整するのではなく、相手の間に立つことで、守備の隙間を利用する狙いが強い。守備の隙間の数は相手の状況によって変わるので、誰がどこに立っても良いルールのほうが理にかなっている。
 
[4-4-2]のゾーンディフェンスを得意とする長谷部監督ならどうやって相手の攻撃を崩すかを裏返しで見ているようで、非常に興味深い。でも、このボール保持の攻撃にこだわりすぎることなく、裏に蹴っ飛ばすことの多い川崎は、サッカーのあらゆる状況に対応できる王道を目指して突き進んでいるのではないだろうか。

 川崎フロンターレのセットプレーからアーセナルの香りがすることがある。アーセナルを参考文献にしていると思うのだが、攻撃の立ち位置の整理は少しレバークーゼンの香りがする。
 
 横浜FC戦から顕著に見られるようになった立ち位置の整理だが、鬼木達監督時代からの得意技であるハーフスペース攻略とあわせて、さらに破壊力を増して行きそうな予感である。問題があるとすれば、失点に絡んでしまうようなミスが多くなって悪目立ちしているゴールキーパーと、得点を決めることに特化した選手の不調だろうか。

 全員で分け合うか、レベルアップを期待するかはチームの方針次第なので、その点が間に合えば、十分に優勝候補になるのではないだろうか。

(文:らいかーると)

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【了】

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