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2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第12回 一意専心と放浪と

「大学にはいろいろな人がいて、あの環境でサッカーに邁進していくのはむつかしい」

 最後の試合からおよそ1週間後、山浦の地元である調布駅の近くで会った。街はすっかりクリスマスムードで華やいでいる。

「この1年、就活をせずにサッカーをやり切る。その選択をしたことについては、よかったと感じています。シーズンを通してケガをすることなく、存分にプレーできました。ああやってサッカーをしていたのはつい最近のことなのに、ずいぶん昔のことのように思えて不思議です」

 僕は92年組の4年間を追い、大学サッカーの価値や面白さを発見する一方、単に選手が実戦経験を積むために活用することが安易すぎる考えであることを知った。一部に先進的な取り組みを行う大学もあるが、全体としては旧態依然とした村社会の色が濃い。

 歴史のある大学ほどOB会の影響が強く、そこではサークル内の論理がしばしば優先される。大会運営は献身的な学生の自治で成り立ち、「審判、フダだよ、フダを出せ!」(カードのこと)と叫ぶオールドファンの存在は妙に心強くある。それらは古き良き伝統と言い換えることも可能だ。日進月歩のサッカー界においては、時代に左右されない希少性を感じる。

 だが、プロ志望の選手が大学に活路を求めた場合、もしチョイスを誤れば4年間身動きが取れない。それはひどく酷なことに思えた。

「選手として成長するために、大学に行けばいいものではない。それは強く思いますね。とにかく自分の考えに揺るぎない芯を持つこと。大学にはいろいろな人がいて、あの環境でサッカーに邁進していくのはむつかしいことです。

 ただ、ヴェルディの後輩については心配してません。ゴウ(端山豪)の巧さは抜群だし、ゲンキ(宮地元貴)はバカみたいに熱い男。特にゲンキは自分とは比べものにならないほど、サッカーに対する姿勢はしっかりしています」

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