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名門バレンシアがついに身売りへ。財政面難を招いた市長の無謀な新スタジアム建設計画

text by 山本美智子 photo by Rafa Huerta

CL決勝会場を目指して新スタジアム建設の野望

 その不動産バブルがはじけて、スペインの多くのサッカークラブが負債を抱えることになった。

 バレンシアの新スタジアム建設が暗礁に乗り上げているのは、その顕著な例としてあげられる。

 この建設のきっかけになったのは、今から12年前、2001年のCL決勝にまで遡る。当時はバレンシアがリーガ・エスパニョーラでも力をふるっていた時代だった。スペイン代表の中盤も、バラハ、アルベルダとバレンシアのタンデムが支えており、ドブレ・ピボーテを流行させ、世の中は4-4-2の黄金期だった。

 その年のCL決勝は、バレンシア対バイエルン。ミラノのスタジアムで行われた決勝の会場にいたバレンシア市長リタ・バルベラは、当時のUEFA会長、レナート・ヨハンソンに、バレンシアでCLの決勝を行いたいと申し出た。ヨハンソン会長の解答は、「そのためには5つ星のスタジアムが必要だ」というものだった。

 全てはそこからスタートした。リタ・バルベラ市長の野望に火がついた。現在のメスタージャスタジアムでは、5つ星を得ることは不可能だと知ったバレンシア市長は、バレンシアに宝石のような建築物を建てることを夢見て、新スタジアム建設計画を打ち出したのだ。

 UEFAの会長は変わり、バレンシアも2001年の勢いは影を潜めた。クラブ会長も次々と入れ変わった。リタ・バルベラのみが一人だけ立ち位置が変わらないままバレンシア市長で居続けており、同じ手腕で、ヨットのアメリカスカップ、F1の誘致などを成功させ実積を積んだ。

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