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名門バレンシアがついに身売りへ。財政面難を招いた市長の無謀な新スタジアム建設計画

text by 山本美智子 photo by Rafa Huerta

昔ながらの地上げ方式で計画を立てるが…

 CL決勝会場のスタジアムを目指すという目的のもと、バレンシアCFとバレンシア州政府、金融機関Bancaja(バンカハ)が手を組んだ。それが2007年のことだ。アイディアは非常にシンプルなものだった。

 旧スタジアム、メスタージャはバレンシア市のど真ん中にある。そのメスタージャを売却し、空き地にオフィスタワーを建設。その売却金及びそこで得られる収益金が、そのまま、新スタジアム建設に使われる。

 建設を請け負う建築会社社長は、フアン・バウティスタ・ソレール。2004年から2006年まで、クラブの会長を務めた人物だ。また、スペインの億万長者リストトップ20の常連であり、バレンシア州内で3位にランクインという筋金入りの企業主でもある。

 土地を売る際に、銀行はその費用を計算するのに鑑定を依頼する。その時点で土地を再評価し、最初の購入金額よりもずっと高い金額で売る。これは簡単な地上げの仕組みであり、土地を所有する多くのサッカークラブが、スタジアムや練習場の売却、建設に躍起になる理由の一つだ。バレンシアもその昔ながらのやり方で一気にかたをつけようとしたのだが、スペインが深刻な不況に陥ったためシナリオが狂った。

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