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名門バレンシアがついに身売りへ。財政面難を招いた市長の無謀な新スタジアム建設計画

text by 山本美智子 photo by Rafa Huerta

「ビジャールが言うには、プラティニは彼に借りがあるのよ」

 スタジアムを買おうという投資企業が見つからない。投資する者がいなければ、高かろうが安かろうが価格自体に意味がない。バンカハは、困った時にバレンシアCFがつつくとお金が出てくる打出の小槌だったが、そのバンカハ自体が2009年金融不況に陥り、Caja Madrid(カハ・マドリード)との合併吸収を余儀なくされた(現在はBankia(バンキア)に変わっている)。

 合併後の金融機関は、スタジアムの件に関心を示さず、建設はストップ。クラブは経営に行き詰まり、銀行は返済を迫ってくる。負債が膨らんでいる現況では、クラブはこれ以上銀行から借り入れができない。

 この状況を打破し、更なる借入を求めるためには、クラブが元本の投資金額を増やすしかない。だが、担保にできる土地や建物は、既に銀行の掌中にある。そこで、バレンシア自治州関係機関がバレンシア財団の49%を手に入れ、8100万ユーロを融資した。

 ところが、今度はこの財団に投資する株主が見つからない。その結果、現在バレンシアは金融機関に3億ユーロの負債を負っていると言われている。

 それでも、リタ・バルベラ市長はスタジアム建設の夢をあきらめなかった。2011年には、スペインサッカー協会のアンヘル・ビジャール会長及びUEFAのミヒャエル・プラティニ会長と話しており、「ビジャールが言うには、プラティニは彼に借りがあるのよ」とコメントしている。

 これらの背景を知っていると、「その借りを返すために、プラティニはビジャールにCLの決勝をバレンシアにと後押ししてくれるんじゃないの?」と言わんばかりの発言に聞こえる。

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