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内田篤人 10年前

CL決勝トーナメント進出を決めたシャルケ。“前半戦で一番大事”な一戦で勝利に貢献した内田の安定感

text by 本田千尋 photo by Ryota Harada

ターニングポイントはヘーヴェデスの負傷

 12月9日、シャルケ練習場。

 ボルシアMGとのアウェイを戦った選手たちも合流する。もちろん内田もいる。緊張感とリラックスとが入り交じって引き締まった空気が漂う。冷たい風が吹く中、練習場を訪れたファンは身を縮めただ凝視した。ミニゲームで内田はボールをしっかりと繋いでいく。およそ1時間の短いトレーニングを終え、ファンへの応対を終えると、クラブハウスへと戻って行った。

 12月10日、非公開練習。

 そして11日、ヴェルティンスアレーナ。深い霧が辺りを覆っていた。いつもとは違う空気が立ち込めている。特別な夜になる――そんな予感がした。ダフ屋の声を通り過ぎて、青いファンの一群は霧の中に佇むアレーナに吸い込まれていく。

 シビれるゲームだった。ターニングポイントは、31分、CBで主将ベネディクト・ヘーヴェデスの負傷だった。勝利が絶対条件の中、なかなか得点を奪えない状況で、またも負傷者を出す。そしてそれは主将のヘーヴェデスだった。

 嫌なムードがスタジアムを覆いかける。しかし、監督ケラーの果断がその空気を払拭する。ボランチで先発出場したマティプをそのままCBに下げ、ヘーヴェデスに変えて投入したのは、CFのソロイだった。

 今日の控え選手を見ると、ゴレツカをそのままボランチに入れる、という選択肢もあったはずだが、指揮官はアタッカーを前線に投入する。攻めろ。その明快なメッセージが誰にも見て取れた。

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