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なぜ日本人選手は海外へ出ていくのか――日本の若者がリスクをとらない理由

日本の若者は「内向き」だと言われるが、サッカー選手は海外に出ていく。その理由を『(日本人)にっぽんじん』の著者・橘玲氏が論じる。

text by 橘玲 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Getty Images

【フットボールサミット第9回】掲載

日本の若者=内向きは果たして本当か?

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マンU・香川を筆頭に多くのサッカー選手が欧州で活躍している【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 マンチェスターユナイテッドの香川真司、インテルの長友佑都を筆頭に、いまでは20代のサッカー選手の多くがヨーロッパで活躍している。ドイツ、イギリス、オランダ、イタリアなどのリーグで20人以上がプレーし、彼らだけで日本代表が編成できるほどだ。

 一方で、ここ数年、「日本の若者は内向きになった」と言われることが多くなった。ハーバードなど一流大学の留学生数も、いまでは中国や韓国に大きく水をあけられているのだという。しかし私は、こうした「日本人論」をあまり信用していない。

 ひとつは、こうした若者批判をするひと自身が、大きなリスクをとっているようには見えないことだ。右肩上がりの高度成長の時代にたいしたリスクもとらずに成功したひと(その多くが大学教授や大企業の元経営者で、いまは悠々自適の年金生活を送っていたりする)が、パイが縮小する困難な時代のなかで、上の世代が残したツケを払いながら生き方を模索する若者たちに説教するというのは、控えめにいってもあまり見栄えのいいものではない。

 もうひとつは、かつての「若者」が海外の一流大学に行けたのは、企業や行政がその費用を出してくれたからだ。私は何人もハーバードでMBAを取得したひとを知っているが、彼らのなかで自分で学費を払った者は一人もいない。

 だとすれば、日本の若者が内向きになった責任は、業績が悪化した企業や、事業仕分けで予算を削られた行政が、留学の費用を出さなくなったことにある。バブル期のように大盤振る舞いすれば、いまの「内向き」の若者たちも、喜んで海外の難関大学を目指すようになるだろう。

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