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イブラが放った圧倒的な存在感。パリの“役者”がレバークーゼンを辱めた伝説的な夜

text by 本田千尋 photo by Ryota Harada

無用に終わったレバークーゼンの対策

 イブラヒモビッチをどうするか? それが対パリ戦のメイン・テーマだった。対ズラタン前哨戦とでも呼ぶべき3日前のシャルケ戦、フンテラールに対して、監督ヒーピアは、CBのコンビをスパヒッチに、ウォルシャイトとした。ウォルシャイトは優れた戦術眼を持つCBだが、結局のところ彼を含むレバークーゼンDF陣はフンテラールに1ゴールを許してしまう。

 そして対パリ戦では、ウォルシャイトに比べ対人能力では上回るトプラクが起用されることとなる。しかしそうした画策も、イブラヒモビッチに対しては無用だった。イブラヒモビッチは前線には留まらず、相手陣内を広く動いた。

 センターサークル付近まで下がり、攻撃の起点となる。右に流れて少し下がり、ルーカス、ファン・デル・ヴィールのサイドアタックを引き出した。かたや左サイドで起点になることがあれば、右サイド深くからクロスも上げる。

 イブラヒモビッチを中心とするパリの攻撃をどう掴まえればいいのか。ボランチのロルフェス、そしてスパヒッチ、トプラクの両CBを中心とするレバークーゼンのDF陣は、捕らえ所が分からないようだった。

 そして38分、ラベッシがスパヒッチに倒され、PKを獲得する。蹴るのはもちろんイブラヒモビッチだ。ゴール左下隅へ、きっちり流し込む。そして42分、圧巻のスーパーゴールが生まれた。

マクスウェルの左からの折り返しを、エリア内にいたマテュイディが落として、イブラヒモビッチがダイレクトで豪快にミドルを突き刺した。前半終了時でスコアは既に3-0である。勝負は既に決してしまった。

 後半開始からヒーピアは中盤の底のロルフェスに代えてライナルツを投入する。手塩にかけたトリプルボランチに推進力を持たせようとする。この試みは功を奏し、幾分かレバークーゼンもゲームを組み立てることが出来るようになった。しかし大勢は変わらない。59分には、スパヒッチが2枚目のイエローで退場してしまう。

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