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香川真司はなぜ試合から“消えて”しまうのか? 劣勢の中でも存在感を示す本田圭佑との違い

text by 河治良幸 photo by Getty Images

香川が速攻に絡めなかった理由

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香川真司はこの4年間で見違えるほど、守備の意識が高くなっている【写真:Getty Images】

 話を香川に戻そう。攻撃面の厳しい流れに追い打ちをかけたのが、守備の役割分担だ。日本代表は前線の4人が高い位置から連動してプレスをかけることで、厚みのある攻撃につなげていくスタイルだが、序盤からプレスがはまらず自陣に下げさせられた。そうなると下がって守る選手と攻め残る選手が出る訳だが、左ウイングの香川は下がる側に回った。

 特に前半の終わりごろからは本田と大迫だけが前から追い、香川と右サイドの岡崎は引き気味にポジションを取って相手のウイングを味方のサイドバックと挟み込みながら、サイドバックの上がりにも対応する形を取っていた。そこから攻撃に転じれば敵陣に上がり、守備に回ると自陣に戻る。その繰り返しだった。

「走らされたというか、両SBが上がってきましたし、なかなか前にも行けなかったので、守備で苦労しましたし、消耗しました」

 香川はこの4年間で見違えるほど、守備の意識が高くなっている。ただ、それだけにボールを支配される展開になると、守備に走り過ぎて攻撃にパワーをかけられない部分が否めない。

 この日は香川の守備参加がなければ相手サイドバックのオーリエにもっと早くやられていたはずだが、香川自身がマーキングに自信を持っていれば、もっと高い位置から並走する形も可能だったかもしれない。

 つまりチーム全体が引いた位置からの速攻主体になってしまい、しかも香川は守備から入る形にならざるをえず、ビルドアップの段階でボールも出てこないため、速攻にはなかなか絡めなかったのだ。

 ボールを持つ機会が少なかっただけでなく、持った時に周りとの距離が遠かったことも要因の1つだ。

「ボールを受けたときの距離感が遠く感じましたし、連動性もうまくいってない感じで、ボールを簡単に失う場面もすごく多くて、そこでリズムをなかなか作れなかった」と香川は語る。後半は遠藤が入ってその点が少し改善したようにも見えたが、ドログバ投入から2失点で、配置自体が変わってしまった。

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