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日の丸をつけるということ――。W杯に出られなかった時代の証言

text by 海江田哲朗 photo by Tetsuro Kaieda

日本代表は別。無条件に応援するし、勝ったら自分のことのようにうれしい

「86年のメキシコ大会に出とったら、どうなったかな。人生変わっとったかもしれん。経験するもの、体感するものはそれほど大きい。ただ、わしらの時は扉が動かんかったなァ。いいところまで行って、手を掛けたけども頑として動かんかった。その次のドーハの時は、少し動いてチラッと中が見えたかもしれん。でも、すぐに閉ざされた。まだ早いよって。

あの時は家族とテレビを見ながら、『おい、W杯行けるかもしれんど。何でもいいからわしも連れて行ってほしい。オフトに頼もう』と言いよったね(笑)。いま思えば……自分にはチャンスがなかったよ。ようわからんけど、たぶんそう」

 97年11月16日、マレーシアのジョホールバルで日本はイランを破り、悲願のワールドカップ初出場を決めた。木村はその時も家でテレビ観戦だった。岡野雅行のゴールが決まった瞬間の興奮は今も憶えている。隣近所からドッと声が上がり、それこそ日本中から歓声を聞いたような気がした。

「試合に勝つのはうれしいよ。自分が活躍して勝つ。もっとうれしい。逆に自分が試合に出ていなければ、そんなにうれしくない。そんなもんよ、人間。だけど、日本代表は別。無条件に応援するし、勝ったら自分のことのようにうれしい」

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