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日の丸をつけるということ――。W杯に出られなかった時代の証言

text by 海江田哲朗 photo by Tetsuro Kaieda

どれだけ多くの人に夢や希望を与えられるかを知れば選手のプレーは変わる

 一方、個人としては十分な手応えがあった。都並にとって、日本代表で戦うことは世界との距離を測る物差しでもあった。韓国戦で都並が抑え込んだ相手の右ウイングは、本大会のベルギー戦で度々チャンスを作っていた。

「結果を出すチームというのは、すべての作業を隙なく行わなければならない。少しでも甘いところがあれば引導を渡される。ドーハの悲劇がそうでした。作戦の一部とはいえ、骨折して満足にプレーできない自分がメンバーに入っていた。チームのモチベーションアップには有効だったかもしれないけど、当然マイナス面もそこにはあります」

 その経緯については『狂気の左サイドバック』(一志治夫著/小学館)に詳しい。さて、現在の日本代表は都並の眼にどう映るのだろうか。

「選手が戦っていないとは思わない。ただ、素直に表現できていないとは感じます。監督ありき、戦術ありきになっている。規律があるのはいいが、過剰に縛られている印象です。だから、負けるにしてもスカッとした負け方ができない。こういう時は感覚的にはみだしてプレーする選手の存在が大事になります。

かといって、そういう選手ばかりを集めてもチームの秩序が保たれなくなる。2つの調和、バランスの取り方は難しいですね。いずれにせよ、相手を叩き潰してやるんだという思い切りの良さが必要なのでは」

 都並はガッツを前面に出し、攻撃的なプレースタイルに磨きをかけてきた。そのうち自分の持ち味を出せるのは、周りの助けがあってこそだと知るようになる。

「自分がたくさんの人に支えられ、どれだけ多くの人に夢や希望を与えられるか。それを知ることによってプレーが変わるんです。本物のプロとして、責任感のある重いプレーができるようになる。若い頃は分からないんだな、これが。俺もそうだったもの。早めに気づいた方がいいよと言えるくらいかな」

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