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キーワードは『瞬間』。システムや個の力を超越したペップ・バイエルン。選手個々が完璧なプレーで連動

text by 本田千尋 photo by Getty Images

「僕達は全く悪いボールが無くプレーする」

キーワードは『瞬間』。システムや個の力を超越したペップ・バイエルン。選手個々が完璧なプレーで連動
フランクフルト戦でハットトリックを達成したトーマス・ミュラー【写真:Getty Images】

 キッカー紙がマン・オブ・ザ・マッチに選出したのは、フランクフルト戦でハットトリックを達成したトーマス・ミュラーだ。同紙は「彼はミュンヘンの選手達のプレーの効果を象徴する」とする。

 ミュラーは、9日付のビルト日曜版で次のようにコメントを残した。

「僕達は全く悪いボールが無くプレーする。完璧な瞬間を創り出すことが出来る素晴らしい個々の選手を抱えているんだ」

 ミュラーの「全く悪いボールは無い」という言葉のとおり、キッカー電子版のデータによれば、フランクフルト戦でのバイエルンのパス本数は「626本」で成功率は「85%」となっている。

 しかしここで興味深いのは「完璧な瞬間を創り出す」というミュラーの言葉だ。バイエルンの布陣を4列標記で記すことが困難であることは、ビルト日曜版が4-2-3-1で表す一方で、キッカー紙が4-1-1-2-2といった少し複雑な表記をしたように、つとに知られることではある。

 それもミュラーの「完璧な瞬間を創り出す」ために「個々の選手」が「全く悪いボールが無くプレー」していると考えれば腑に落ちるところがある。要するにペップ・バイエルンは、例えばアヤックスが伝統的に4-3-3というスタイルを強固に打ち出して戦うように、システムを拠り所とはしていない。

 拠り所とはしていないとしてしまうと言い過ぎかもしれないが、アヤックスのそれに比べれば遥かに緩やかなものと言うことは出来るだろう。

 かといって、FCバルセロナのメッシのように、特定の個の力に依存している訳でもない。フランクフルト戦でミュラーはハットトリックを達成したが、5日のチャンピオンズリーグ、グループFのアヤックス戦でメッシが2点目で見せたように、強引なドリブルといった個人を強く打ち出すプレーは無かった。

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