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豪州サッカー、一時代の終焉――。“スキンヘッドのテクニシャン”ブレシアーノに贈るトリビュート

text by 植松久隆 photo by Getty Images

最後の目標、アジア制覇を成し遂げる

 アジアカップを豪州が制した翌朝、シドニーの目抜き通りでは急な告知ではあったが、サッカルーズの優勝報告イベントが催された。そこに集まったファンのひとりが、「ブレッシ、辞めないでくれ」と声を掛けると、ブレッシアーノは、ファンの一人ひとりにサインをする手を休めて、声の方に顔を向けて「有難う」と優しく応えた。

 その時の澄みきった達観したような表情は、ピッチ上でのスキンヘッドに青筋を立てた険しい勝負師の顔立ちに比べると、何とも柔和な顔だった。

 ここからは、推測だ。先の記事の取材に応じた時点のブレッシアーノは、おそらくアジアカップの事前合宿、そして、既に消化していた予選リーグの2試合でのルオンゴの活躍を見て、「後を任せられる選手が出てきた。これで安心して代表を退ける」との思いを新たにしたのであろう。

 そして、最後の大目標であったアジアカップを掲げた夜、「目標も達成、後継者も育った、もう充分やった」と代表引退を完全に決意したのだろうか。そうであれば、あの時のあの柔和な表情にも大いに頷ける。

 サッカルーズの真のレジェンドは、記憶と記録にも残る活躍と共に静かにグリーン&ゴールドのジャージを脱いだ。あらためて、「ブレッシ、有難う。そして、お疲れ様」との思いをこのトリビュートに込めて贈りたい。

【了】

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