少し早く迫られた『結果』
つまりチーム作りの初期段階として基本スタイルを植え付けている中で、今回は結果という命題のもとにノートの少し先のページを見せる必要に迫られたにすぎない。そういう引き出しははじめから持っている監督だ。ただ、ここでそれを見せることになったのはハリルホジッチ監督としてもやや想定外の部分はあるかもしれない。
前監督のハビエル・アギーレ氏が不測の事態により、アジアカップ直後に契約解除となり、ハリルホジッチ監督が就任したのは3月。ここまでの期間は5ヶ月足らずで、代表チームの活動期間は1ヶ月程度だ。まして今回は初招集の選手も多い。
正直に筆者の個人的な意見を言わせてもらえば、北朝鮮戦のあとに国際的な会見の場でJリーグの日程問題を訴えるのはお門違いであり、その是非がどうこう以前の問題だ。物事を歯に衣着せずに言う気質にしても、大会中はそうした言い訳をせずにできるベストを尽くすべきだ。
もしかしたら意図的にそういう発言をしたのかもしれないが、日本においてハリルホジッチという人物の印象を悪くするエピソードになった。それでも今回の結果そのものは状況を考えれば想定の範囲だったことも確かだ。
監督も選手も試合となれば勝利を目指すのは当たり前。ファンが勝利を期待するのも当たり前だが、報道するメディアとしてはチームの方向性と現在の優先順位を整理した上で課題や問題点を伝えていくべきだと考えている。結果には多かれ少なかれ理由が存在するもので、4チームが出場している大会で唯一、2試合で優勝の可能性が消えてしまったことは協会も指揮官も重く受け止める必要がある。
ただ、それは東アジアカップという大会のタイトルを逃してしまったことの責任であり、W杯予選で敗退したことでも本大会で惨敗したことでもない。1つ1つの勝利は大切だ。チームの方向性と現状を整理し、その中で何が必要なのか、監督や選手に何が求められるのかを考察して、中身のある批判や問題提起につなげていくのがサッカーという競技を取り巻くメディアという立場のあり方ではないか。
【了】