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Jリーグ 7年前

FC東京にもたらされた“化学反応”。高萩洋次郎と橋本拳人、ボランチが体現する「泥臭さ」

text by 藤江直人 photo by Getty Images

橋本を抜きに語れない決勝点

FC東京のGK林彰洋
FC東京のGK林彰洋【写真:Getty Images】

 王者を撃破する決勝点となった後半37分のオウンゴールは、橋本の存在を抜きには語れない。途中出場のFW前田遼一が後方からのロングボールに対して、競り合ったDF植田直通と巧みに体を入れ替えながら前へ抜け出す。

 すかさず右側へ走り込んでいた大久保へパスを通すものの、大久保からのリターンは相手に弾かれてしまう。万事休すか、と思われた直後だった。後方をしっかりフォローしていた橋本がこぼれ球を拾い、左サイドでフリーの状態だったMF中島翔哉へパス。

 得意のドリブルで切れ込んできた中島が半ば強引に放ったミドルシュートは、GKクォン・スンテの眼前で弾む軌道を描き、かつゴールの枠をしっかりととらえていた。さすがにキャッチすることはできず、必死にパンチングするしかない。

 もっとも、思い描いたほど大きく弾き返すことができず、カバーしようと必死に戻ってきたDF三竿雄斗の目の前に弾む。三竿はコーナーキックに逃れようとしたが、背後に大久保と永井謙佑(前名古屋グランパス)のプレッシャーを受けていたこともあり、自軍のゴールへボールを押し込んでしまった。

「守備の部分でみんな我慢強くゼロに抑えてきたし、最後、林(彰洋)のところで止めてくれたシュートもあった。チーム全体で耐えてきたからこそ、この勝利がこぼれてきたと思っている。このチームは本当に守備のところが安定しているので、こういう戦いができれば勝ち点を積み上げていけると思う」

 華麗ではなく、泥臭くもぎ取った感の強い開幕戦勝利に表情を綻ばせた高萩は、一方でサガン鳥栖から加入したGK林彰洋に感謝することも忘れなかった。大久保が決定機を外した直後の後半14分。FWペドロ・ジュニオールとの球際の攻防で敗れてしまった。

 失われたボールはMF土居聖真を介して、ペナルティーエリアのなかへ侵入してきたペドロ・ジュニオールへ。絶体絶命の危機は、ニアとファーの両サイドをあえて空けた体勢を瞬時に取り、相手にニアを狙わせた林のポジショニングで事なきを得た。

 ペドロ・ジュニオールがニアへパワーシュートを放ってくると察知した195センチの大型GKは、コースを見切って左手を触れる。コーナーキックへと回避した直後には雄叫びをあげて、チームメイトたちを最後尾から鼓舞した。

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