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Jリーグ 7年前

磐田・松浦拓弥、浦和撃破の立役者に。名波浩監督の“秘蔵っ子”が示した「反発力」

text by 青木務 photo by Tsutomu Aoki, Getty Images

「彼に対しての想いが強すぎたがために、色々な仕打ちをした」(名波監督)

松浦拓弥(左)のゴールに歓喜していた名波浩監督(右)
松浦拓弥(左)のゴールに歓喜していた名波浩監督(右)【写真:Getty Images】

 それでも、ロシアW杯アジア最終予選による中断期間を経て迎えた浦和戦で、チームを勝利に導いたのは背番号11だった。“親友”アダイウトンとのコンビネーションから奪った1点目、素早い動き出しからオフサイドラインを攻略した2点目と、それぞれ異なる形からゴールを陥れた。どちらもキレのあるプレーで、状態の良さを感じさせた。もちろん、ただ漫然と日々を過ごしていたらあの活躍はなかっただろう。

 ここ最近、磐田の練習場ではある光景が見られていた。

「2ヶ月、3ヶ月プレーヤーというのは彼の悪い癖というか特徴の一つで、その後ちょっと休養しないと1シーズン通してハイパフォーマンスは出せない。その中でベンチからも外して、トレーニング後に罰走ではなくコンディションを上げるために外周を走らせるようなことをやらせた」

 浦和を4-2で下した後、名波監督は松浦に“特別メニュー”を与えていたことを明かした。

 全体練習後に一度クラブハウスへと引き揚げるも、すぐにグラウンドへ下りてくる。足元を見ると、スパイクではなくランニングシューズを履いている。そして、フィジカルコーチと共にグラウンドの周りを走り始めた。

 練習で手を抜くことはないが、この走りのメニューをこなす中で、それまで以上に自身を追い込めたのは確かだろう。動きに鋭さが戻ると消極的なプレーは消え、果敢に相手の懐へ侵入するなど持ち味が復活した。浦和戦での爆発は、突然変異的に起こったものではないのだ。

「今日の(松浦の)2ゴールは、僕自身は何というか……」

 数秒の沈黙の後、名波監督の口から出てきたのは松浦へのねぎらいの言葉だった。

「彼に対しての想いが強すぎたがために、色々な仕打ちをしたんですけど、よく跳ね返してこういうパフォーマンスをしてくれたなと」

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