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Jリーグ 7年前

新生マリノス、“勝利の方程式”。J1連続フル出場新記録の鉄人、中澤佑二が語る「最適解」

text by 藤江直人 photo by Getty Images

見つめるのは豊穣の秋。不気味な存在感放ちはじめたマリノス

中澤からかけられた一言が大きかったと語る天野純
中澤からかけられた一言が大きかったと語る天野純【写真:Getty Images】

 現在進行形のなかで定まってきた戦い方が、どんなに無骨に映っても気にすることなく、まずは前半をスコアレスで折り返すこと。堅守の中心として体を張り続けているからこそ、中澤は偉大な鉄人記録を達成しても「欲しいのはマリノスのタイトルなので」と素っ気ない。

 開幕から187センチ、82キロのサイズを誇るデゲネクと新・鉄壁コンビを結成。コンフェデレーションズカップ出場のためにデゲネクが不在となると栗原と再タッグを組み、栗原が左太ももの肉離れで離脱すると入団2年目の23歳、パク・ジョンスをリードしながら最終ラインを支えた。

「外から見ているとわからないところがあるかもしれませんが、一歩先を読んだポジショニングなど、隣でプレーしていて本当に勉強になることが多い。特にすごいのはヘディング。自分たちのゴールを守るときももちろんですが、コーナーキックなどで攻め上がったときのヘディングも本当に素晴らしい」

 生きた教材を目の前にしてパク・ジョンスが声を弾ませれば、6月18日のFC東京戦の後半終了間際に、値千金の決勝弾となる記念すべきJ1初ゴールを叩き込んだ天野はこんな秘話を明かしてくれた。

「佑二さんからは『躍動しろ』とずっと言われています。『お前が中盤で躍動すればマリノスが勝てる』と。冗談半分だったかもしれないけど、僕にとっては本当に大きなひと言でした」

 先発フル出場するための身心のコンディションを常に整え、いざピッチに立てば技術と積み重ねてきた経験を駆使して守備陣を統率。俊輔が去った後の攻撃陣を差配する天野のモチベーションも巧みにくすぐりながら、現時点におけるベストの戦い方に何とかたどり着いた。

 総失点14は、消化試合数がひとつ少ないフロンターレと並んで最も少ない。当然ながら、3失点以上は一度も喫していない。総得点22は、もちろんトップのレッズの40に比べて見劣りはする。それでも数少ないチャンスを確実にモノにして、後半を中心に7試合連続で得点中だ。

「今日を見ると2‐0からのゲーム運びに、まだ慣れていない。チームとして攻めるのか、守るのか、ボールをキープするのかという判断をチーム全体で統一させていけば、もっといいチームになる。そうじゃないと今日みたいに1点取り返されて、あわや同点にされそうな事態になりかねないので。

 でも、後半になれば必ず点を取れる自信のようなものもこの数試合あるし、いまはいい形で歯車がかみ合っている状態なので、このまま進めていければ。二回り目に入れば相手もさらにマリノスを分析してくるので、そのなかでも相手よりいいパフォーマンスを発揮することが大事になってきますよね」

 こう語る中澤が見つめるのは豊穣の秋。8日のサンフレッチェ広島戦から幕を開ける後半戦は、サマーブレイクをはさんで清水エスパルス、アルビレックス新潟、コンサドーレと下位チームとの対戦が続く。泥臭く、いい意味でなりふり構わず白星をもぎ取り続けるマリノスが、不気味な存在感を放ち始めた。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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