井手口陽介を育んだG大阪の「生きた教科書」たち。怪物の「種」を開花させた国際舞台の経験

先月31日、日本代表は来年ロシアで開催されるW杯への切符を勝ち取った。宿敵・オーストラリアとの一戦で6大会連続となるW杯出場権獲得を大きく手繰り寄せるゴールを決めたのは、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の大抜てきに応えた井手口陽介だった。急激に台頭する21歳はいかにして育まれたのか。ガンバ大阪の番記者として長く井手口を見守ってきた記者が紐解く。(取材・文:下薗昌記)

2017年09月04日(月)12時06分配信

text by 下薗昌記 photo Getty Images
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「1年目の陽介にはあまり印象がない」(今野泰幸)

ガンバ大阪
井手口の昇格1年目となった2014年のG大阪には、明神、遠藤、今野(左から)という代表クラスのボランチが揃っていた【写真:Getty Images】

 かつてアカデミーの先輩にあたる宇佐美貴史は、自身以来となる飛び級でのトップチーム昇格を果たした後輩について「持っているポテンシャルは怪物級」と評したが、一歩ずつ、そして着実に短いプロのキャリアで成長を遂げてきたのが井手口陽介という「怪物」だった。

「ユース時代から、いい選手だとは聞いていた」

 遠藤保仁らもその名を耳にしていた逸材は高校3年生だった2014年3月にトップ昇格。しかし、プロ1年目はプロの壁の高さに弾き飛ばされた。

 いや、正確に言うならば日本サッカー史に残るボランチ3人に弾き飛ばされたという方が正確だろう。

 三冠イヤーの2014年、ガンバ大阪で2ボランチを託されていたのは遠藤と今野泰幸の代表コンビで、「鉄人」明神智和が控えに回るというJリーグ屈指の層の厚さ。シーズン途中の8月に18歳が割って入れるほど、甘くはなかった。

「チームは三冠を取ったけど、僕は何もしていないんで……」

 シーズン終了後、ただでさえ取材に対する口が重い少年は、ポツリと悔しさを口にしたが、その言葉は紛れもない本音だったはずだ。

「面白い選手だとは思ったけど、1年目はそれほどいいとは思わなかった」と若手のポテンシャルを引き出すことに定評ある長谷川健太監督が言えば、今野泰幸も「1年目の陽介には正直、あまり印象がないんですよね」と振り返る。

「飛び級」の肩書きがついた先達たちは、圧巻のドリブルを持ち味としていた家長昭博や抜群のシュート力を持つ宇佐美らオン・ザ・ボールの技術に長けていたが、井手口は従来の逸材たちとは異なり、オフ・ザ・ボールの局面でも輝ける選手である。

「ボールを刈り取れる選手」と井手口を評する遠藤は、1年目からそのポテンシャルを「陽介は球際も強いし、攻守の切り替えで力を出せる。ちょっと今までのユース上がりとは毛色が違うかな」と見抜いていた。

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