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日本代表 6年前

【識者の眼】ネイマールと対峙、酒井宏樹の奮闘。差は歴然も“デュエル”で示した成長と価値

日本代表は10日、フランス・リールでブラジル代表と対戦し、1-3で敗れた。ピッチ上に現れていたのは歴然とした力の差。あらゆる面でブラジルに上回られた。それでも1人、相手のエースと互角の勝負を演じたのは酒井宏樹だった。今季2度目のネイマールとの対戦を経て、マルセイユでの成長を証明している。(取材・文:河治良幸【リール】)

text by 河治良幸 photo by Getty Images

力の差は歴然。それでも酒井宏樹は食らいつく

酒井宏樹
酒井宏樹は対面のネイマールと何度も熱い“デュエル”を繰り広げた【写真:Getty Images】

 10日に行われたブラジル戦、日本は前半だけで3失点。後半に1点を返して1-3としたが、点差以上にチーム力、個の力の差を痛感させられる試合だった。しかし手応えがなかったわけではない。その1つが右サイドで対面するネイマールとの熱い“デュエル”(語源としてはフランス語などで「決闘」の意味で、サッカーにおいては1対1や対人戦の強さを指す)を繰り広げた酒井宏樹だ。

 北部リールとほぼ反対側のマルセイユに所属するとはいえ、やはりフランスリーグの選手。試合前の日本代表のスターティングメンバー発表では最も大きな歓声を受けた。そして、その期待に応えるプレーをして見せた。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も「ネイマールと対峙した(酒井)宏樹もいくつかのデュエルで勝っていた」と言及したほど。持ち前の身体能力や技術に加えてメンタル面で後手に回らなかったことが大きいだろう。

 開始3分にマルセロのフィードから胸トラップでインサイドに入り込まれ、何とか付いていって山口蛍と挟み込んだシーンを見た時は、かなり分の悪い戦いを想像した。しかし、そこから常にタイトな距離でマークについてボールを出させず、持たれても縦のコースを切ったところから、スピードで振り切られることなく対応した。

 22分に再びロングボールからインサイドに潜り込まれる危ないシーンはあったが、左サイドで一度ボールを持ち、仕掛けながら周囲と絡んでゴール前に進入するというネイマールの型を出させなかったのは酒井宏樹の奮闘によるところが大きい。

 ただ、酒井宏樹がネイマールに意識を集中する分、そのインサイドをガブリエル・ジェズスにうまく使われ、3つ目の失点も一度はネイマールへのパスをカットしたところから、セカンドボールをつながれ、逆サイドから送られたクロスに酒井宏樹の裏で合わせられた。

 やはりサイドを根城とするネイマールに意識を引きつけられれば、それだけ周囲のケアは難しくなる。そこは1つの難しさだが、本来はもっとボールを触り、起点になりながらゴールに絡むネイマールの動きをこれだけ制限すること自体かなり難しいタスクだ。その観点でこの試合の酒井宏樹は守備面で良い働きをしていたと言える。

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